米、デルタ株猛威でワクチン接種が増加傾向

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 アメリカでは8月2日、18歳以上の成人で少なくとも1回のワクチン接種を受けた人の割合がついに70%を超えた。70%というのはバイデン大統領が独立記念日である7月4日までに達成しようとした数字だが、約1ヶ月後に達成することになった。しかし、現在のところ12歳未満の子供の接種が許可されていないうえ、ワクチン接種を拒否する人々もまだ多いことから、ワクチン接種完了者は人口の50%となっている。つい最近までは新型コロナウイルスの新規感染者が激減していたアメリカだが、マスクを外す人が増えたうえ、夏休みなどで気が緩んだ隙に感染力の強いデルタ株が流行し始め、再び感染者数が増加の一途をたどっている。

◆南部州で猛威を振るうデルタ株
 夏休みが終わり学校では新学年が始まるなか、今後とくにマスク着用令などが敷かれていない州において、ワクチン未接種者の間で感染が爆発的に拡大する可能性も十分考えられる。すでにフロリダ州、アーカンソー州、テキサス州など、新規感染予防のための規制が緩いばかりか、学校や職場でのマスク義務付けが禁止されている州では、新規感染者が激増。なかでも、トランプ支持者のロン・デサンティス氏が州知事を務めるフロリダ州では、国内でも最も新規感染者の増加が著しい。2024年の大統領選出馬を狙っていると噂されるデサンティス氏は、Qアノン信者や共和党右派、「エバンジェリカル」と呼ばれるキリスト教福音派など、新型コロナウイルスを軽視する人々を重視するためか、同州内でのデルタ株流行もほぼ野放し状態だ。
 
 しかし、デルタ株の感染拡大が続くなかで、ワクチン未接種の人々が危機感を持ったためか、アメリカでは最近伸び悩んでいたワクチン接種率が再び上昇傾向に向かっているようだ。

 疾病対策センター(CDC)の統計によると、ワクチン接種の7日移動平均は4月11日に最高値である345万本を記録して以来、少しずつ下降傾向に向かっており、デルタ株の感染拡大が急激に加速する前の7月8日にはその数が43万本まで落ちていた。しかし、その後すぐにデルタ株の感染が広がり、ワクチン接種率の低い南部州を中心に猛威を振るっているためか、7月8日を境にして再び緩い上昇傾向に転じており、8月1日には7日移動平均で59万本を記録した。

Text by 川島 実佳