中国の「ゼロコロナ戦略」、デルタ株出現で限界か 悪影響指摘する声
◆ゼロコロナ継続に疑問符 政治的事情も
中国は「ゼロコロナ」の封じ込め戦略で昨年は大流行を抑えることに成功し、国内にはほとんどウイルスがない状態が続いてきた。感染制御に失敗した多くの国々とは対照的に、2.3%の経済成長も遂げている。しかし、この戦略が本当に持続可能なのかという疑問が国内外から出てきている。
北京大学のLiu Guoen氏は、デルタ株に対しゼロコロナを続けていくことは困難で、現在の政策の調整と最適化が必要という考えだ。中国疾病管理予防センターの曾光氏は、今回の中国での流行は大半が軽症であり、これほどのパニックやプレッシャーになるようなものではなかったと指摘。今後はより強力な集団免疫を構築し、ゼロコロナのアプローチを終わりにするために変化が必要だとしている。(SCMP)
中国ではワクチン接種は14億回を超えたとされているが、政府は戦略を変える気がないようだと外交問題評議会のヤンジョン・ファン教授は指摘する。感染者数ではなく死亡者数を減らすことに重点を置いた政策に切り替えるべきという意見もあるが、当局にとっての最大の課題の一つは、リスクを嫌う国民をどう説得するかだという。国民にとっては武漢での出来事がトラウマになっており、メディアが他国の感染状況を地獄のように伝えたことも恐怖心を煽る結果になっているという。(BBC)
ワシントン大学のナンシー・ジェッカー教授は、ゼロコロナ戦略のロックダウンは貧しい人々への影響が大きく、長期的には精神衛生にもよくないとする。早めに政策の転換をしなければ、社会のすべてのレベルへの影響がより深刻になるとしている。(同上)
北京のコンサルタント会社、プレナムのフェン・チューチェン氏は、共産党は冬季五輪まで、そして2022年後半に行われる重要な党大会と指導者交代の後まではゼロコロナ政策を維持したいだろうとする。達成されればパンデミックに対する勝利と中国の政治システムの優位性を宣言することができるからと説明している。(FT)
◆ワクチンパスポートに壁 取り残される不安も
アナリストたちは、ゼロコロナからの明確な出口戦略を政府が示せなければ、中国は不利になると述べる。欧米では低いレベルで感染を許容し、移動規制を解除し経済再開に向かおうとしている。この流れのなか、経済をフル稼働に戻すには中国は国際的な移動を再開する必要があり、とくに2月の北京五輪開催に向けその重要性が増していると分析している。(FT)
対策として、中国の指導者たちはワクチンパスポート導入を議論し始めている。もっとも国内のワクチン接種が進んでいるとはいえ、ほとんどが国産の不活性化ワクチンだ。有効性がはるかに高いファイザーやモデルナなどのmRNAワクチンは承認されておらず、ワクチンパスポートで他国とほとんど合意に至っていないのが実情だ。(FT)
最近はゼロコロナを目指したオーストラリアやシンガポールもワクチン接種率を高め緩和策に切り替える方針を示している。ウィズコロナ陣営が拡大するなか、中国の今後の出方が注目される。
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