フランスにおける人種的差別 仏サッカー代表選手の発言が騒動に

Lewis Joly / AP Photo

 フランスは総人口の1割あまりが移民の国であり、黒人系やイスラム教徒など多種多様な人々が存在する。とくに、筆者が留学していたマルセイユ周辺はイスラム教徒の割合が人口の3割を超え、フランス最大の移民の街である。移民自体が多いので、日本人やアジア系の絶対数は少ないものの、アジア系への偏見やヘイトクライムなどが横行しているわけではない。

 しかし、近年も過激思想に感化されたイスラム移民によるローンウルフテロが断続的に発生しているように、人種や民族、宗教の違いよる亀裂や対立などはいまでも見られ、それはフランス社会が抱える大きな問題といえよう。

◆コロナ禍によって増加するアジア系へのヘイトクライム
 一方、今回の騒動と比較するべきではないが、コロナ禍もあってフランスでもアジア系を狙った嫌がらせや暴力、いわゆるヘイトクライムが増加している。 今年2月にはパリ17区で日本人が塩酸で襲撃される事件が発生し、昨年2月にはパリで日本食レストランの店先に「コロナウイルス消え失せろ」などとフランス語で書かれた差別的な落書きが発見された。

 先月、米調査機関ピュー・リサーチ・センターが発表した統計でも、フランスなど欧米諸国市民の中国へのイメージは悪化しており、否定的な見方が軒並み6割超えとなっており、今後も引き続きアジア系を狙ったヘイトクライムには注意すべき状況が続きそうだ。

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Text by 和田大樹