世界に広がるデルタ株の脅威
◆欧州以外にも広がる影響
デルタ株が波紋を呼んでいるのは欧州だけではない。アメリカでは、6月5日から3週間で、デルタ株の比率が10%から35%に増加している(ル・タン紙)。
アジアでは、バングラデシュが、デルタ株の増加を受け、28日から厳しいロックダウンに入ることを決め、前日27日は首都ダッカを離れる数万人の出稼ぎ労働者でひどく混乱した。インドネシアは27日、これまでで最も多い新規感染者数、2万1000人超を記録。ロックダウンには至らないものの政府は一時的な移動制限を出している。タイのバンコクも28日から1ヶ月間レストランや工事現場を閉鎖し、20人以上の集会を禁じることを決め、マレーシアも6月頭開始したロックダウンの延期を決めた。(ル・モンド紙)
オーストラリアもデルタ株の拡大を防ぐために、シドニーの一部区域が2週間のロックダウンに入り、パースやブリスベン、ダーウィンでも制限が敷かれた(ル・モンド紙)。なかでも、たった一人のリムジンタクシー運転手から80人以上に感染したシドニーのクラスターは、国民に大きなショックを与えた。(ル・タン紙)
ワクチン優等生国であるイスラエルでさえ、デルタ株の影響は避けられず、6月21日以来一日の感染者数が100人を超えるようになった。そのため、6月15日やめたばかりのマスク着用義務を、再び屋内で25日から採用することを決めた。(ニース・マタン紙)
また、現在第3波が訪れているとみられるアフリカにおいても、すでにコンゴ民主共和国やウガンダなど14ヶ国でデルタ株が主流となっており(ル・タン紙)、今後の推移が気になるところだ。
◆ワクチン接種率80%という高い壁
ウイルスの感染力が高ければ高いほど、感染防止には、ワクチン接種人口の確率の高さが求められる。デルタ株の感染拡大を免れるには、人口の80%がワクチン接種を完了する必要があると専門家らは考えている(ル・モンド紙、6/25)。ちなみに、現在ワクチン接種率上位10位に入るイスラエルでさえワクチン接種が完了した人の割合は57%で、世界全体では10.7%だ。
こういった状況にもかかわらず、欧州ではスペイン、スイス、イタリア、アイスランド、フランスなど、制限の緩和に向かう国も少なくない。人の移動が増える夏が、新たな変異にどう影響するのかも、気になるところだ。
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