ネパール変異株? 英がポルトガルの安全度を格下げ 妥当性に批判も

ファロ空港に到着した旅行者(5月17日)|Ana Brigida / AP Photo

◆帰国者で空港が混乱
 ポルトガルをアンバーリストに移すという発表に、慌てふためいたのが、ポルトガルで久々のバカンスを満喫していたイギリス人たちだ。もともとポルトガル、とくに南部のアルガルヴェ地方はイギリス人に人気のリゾート地。6月8日を過ぎると、帰国後10日間の隔離とひとり120ポンド(約1万8000円)のPCR検査が義務となる。それを避けるため、多くは休暇を切り上げて帰国する選択を取り、発表から施行までの数日間アルガルヴェのファロ空港は混雑状態になった。(ストレーツ・タイムズ、6/7)

 帰国客の急増に、英国航空はフライトを増加し、TUIやイージージェットは予定より大きなサイズの航空機を用いるなどして対処したが、航空券の値段は高騰。一時は、ファロ―ロンドンの片道切符が540ポンド(約8万3000円)を超えたほどだ(BBC、6/5)。

◆イギリスが挙げる格下げ理由は妥当か?
 イギリスはこの決定の理由として、「ポルトガルの新規感染者が倍近く増えた」ことと「インド変異株から派生したネパール変異株の存在」を挙げている。(BBC、6/5)だが、いずれもその妥当性には疑問の声が内外から上がっている。

 まず、倍近く増えたとされるポルトガルの感染状況だが、実のところ増加後もイギリスの現況とあまり変わりがない。数でいえば、10万人当たりの感染者数は、イギリスが5.1、ポルトガルが5.4だ。また、イギリスが言及する「ネパール変異株」はいまのところ世界保健機関(WHO)も認識していない存在だ。

Text by 冠ゆき