「歩行者ばかり優先」自転車天国アムステルダム、サイクリストから不満噴出

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◆歩行者巻き返し? 自転車政策に変化
 もっとも市の人口が膨らむにつれて、アムステルダムでは公共スペースの使い方が課題になっているという。自転車と歩行者のバランスを取るため、2017年からサイクリストだけでなく、歩行者も優先するという計画が進んでいる。(ブルームバーグ

 ガーディアン紙によれば、市の中心部では歩行者専用区域が増え、縁石やフェンスで自転車の通行が止められているという。また、自転車が市の2つの中心地を移動する場合、直行ではなく迂回ルートを通ることを推奨する実験も2019年から2020年に行われていた。サイクリストによる過剰な混雑と猛スピードでの移動が「ストレス」を生じさせるとし、地元の住民や起業家たちが対策を求めたためだ。

 サイクリスト組合アムステルダム支部の報道官は、自転車が街のなかを通れなくなれば、サイクリングの魅力が半減すると主張し、市がサイクリストを締め出そうとしていると批判している。これに対し市側は、自転車を中心部から排除する意図はなく、限られたスペースを自転車と歩行者が安全に使えるようにすることが必要だとしている。

◆マナーも問題化 歩行者との共存を
 サイクリストは自分たちの権利を主張するが、実際のところ彼らのマナーにも問題があるようだ。歩行者からは信号無視や突然の歩道への飛び出しといった苦情が出ており、ベビーカーや目の不自由な人にとっては脅威となっている。自転車走行中にメールをするという違反もあり、罰金も設けられたほどだ。(ブルームバーグ)

 CNNによれば、駐輪マナーも問題になっている。アムステルダムでは橋の欄干などに自転車を止め置く不適切な駐輪が多く、ただでさえ狭い歩行者通路をさらに狭めてしまっているという。市では欄干沿いに花を植えたプランターなどを設置して、駐輪を防いでいるという。

 アムステルダム大学都市サイクリング研究所の研究者は、サイクリストの多いアムステルダムでは彼らが主導権を握っており、歩行者優先の場所でも自転車優先が期待されているところがあると述べる(ブルームバーグ)。自転車文化が根付いたアムステルダムは、地球にやさしい模範的都市として世界中から高い評価を得ているだけに、サイクリストは歩行者との共存を目指してほしい。

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Text by 山川 真智子