「歩行者ばかり優先」自転車天国アムステルダム、サイクリストから不満噴出

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 町中に専用レーンが設置され、市民の最も手軽な交通手段として自転車が利用されているアムステルダムは、サイクリストの天国といわれている。ところが最近は、市の自転車に寛大な政策が歩行者優先にシフトしており、サイクリストから不満の声が上がっている。

◆自転車先進国オランダ、国を挙げサイクリスト支援
 ガーディアン紙によれば、オランダでは20世紀初頭には自転車の数は車よりはるかに多かった。ところが戦後経済が好調になると、自動車を所有する人が増加。交通量が増えるとともに事故も増加した。危機感を覚えた市民団体は、政府に安全な都市計画のためのアイデアを提案し一定の成功を収めた。その流れからFietsersbondというサイクリスト組合が誕生し、公共の空間に自転車専用道路を作るための活動が始まった。

 1970年代に入って自転車専用レーンの設置が実現。徐々にオランダの政治家たちはサイクリングの利点を認識し、交通政策も変化した。1980年代になるとオランダ各地で自転車にやさしい街づくりが推進され、自転車道が作られそのネットワークが広がった。

 アムステルダムの観光局によれば、現在市内には767キロの自転車道があり、88万1000台の自転車が市内に存在しているという。12歳以上の市民の58%が1日1回は自転車に乗るということだ。サイクリスト組合のミシェル・ポスト氏は、将来的には自動車の交通量が減少し、自転車がアムステルダムの道路のメインになるというビジョンを示している。

Text by 山川 真智子