「ファイザー製は危険と広めて」インフルエンサーに謎の仕事依頼 ちらつくロシアの影

Vincent Thian / AP Photo

◆見え隠れするロシアの影
 インフルエンサーのひとりレオによれば、ファジー社の拠点とされたロンドンの住所に同社は存在せず、実際にあるのは脱毛サロンだ。「従業員のリンクトインのプロフィールも奇妙だ。ロシアで働いたことがある人ばかりだ。しかも今朝からみな削除されている」(レオのツイート)。

 ニュメラマの調査も、ファジー社はイギリスに登録されていないことを明らかにしている。ファジー社サイトには「クライアントについても、成功したプロジェクトについても何も載っていない。その一方、フェイスブックやツイッターのほか、ロシア最大のSNSであるVkontakteにリンクしている」。また、ニュメラマも「リンクトインで確認できたファジー社の従業員は一人だけで、以前ロシア企業で研修したことがある人だ」と指摘する。ル・モンド紙は、「ファジー社CEOのプロフィールを見ると、同社はロンドンではなく、ロシアのモスクワから操作されていることが明らか」だが、「そのプロフィールページはその後アクセス不可能になった」と記す。また、同社がインフルエンサーらに送ったデータサイトのほとんどは、5月24日の午後早い時間に削除されたという。

 真相解明に乗り出したファクトチェッキングサイト『Fact & Furious』のアントワーヌ・ダウストは「グーグル検索ではたいして何も見つけられなかったので、ロシアの検索エンジンYandexで検索してみたところ、ファジー社のモスクワでの求人広告が引っかかった」という。さらに、「ファジー社が属するホールディングスAd Nowの持ち主の名は、ウラジミール・バシュキンで、モスクワで学業を終えたロシア人」であること、同社の従業員のプロフィールはすべてロシアのリンクトインのアカウントにつながっていることを明らかにしている。(BFMTV、5/25)

 探れば探るほど出てくるロシアとの結びつきは何を意味するのか? なぜファイザー社ワクチンを特別に標的とするのか? いまだEUの承認を受けていないロシアのワクチン、スプートニクVのプロモートにしてはやり方が粗い。報酬になびきそうにないインフルエンサーを選んでいるし、連絡時の英語やフランス語も達者とは言えない。また簡単な調査で露呈するほころびも多すぎるように思える。

 いずれにせよ、人目をひくニュースほどソース確認が重要だということを改めて肝に銘じておきたい。

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Text by 冠ゆき