「ファイザー製は危険と広めて」インフルエンサーに謎の仕事依頼 ちらつくロシアの影

Vincent Thian / AP Photo

◆持ちかけられた仕事の内容
 持ちかけられた内容は、一言でいえば「ワクチンのせいで世界で約1000人が死亡したことをビデオで話す。その対価として報酬を得る」というものだ。また、「ファイザー社ワクチン接種者の死亡率はアストラゼネカ社ワクチン接種者の3倍に上るようだと説明する」「主流メディアはまだ流していないと指摘する」「最後は視聴者に『自分で結論を引き出すよう』呼びかけて終えること」などの細かい指示もついていた(『ニュメラマ』5/24)。ソースとして提示するべき表のURLも指示されていたが、ル・モンド紙の調査ではこの表の出どころは判明しなかったという。しかも、そのURLや同表を含むレディットの投稿などは、その後すべて削除された。

 その内容の怪しさもさることながら、スポンサーについての情報もあいまいなものだった。ファジー社は、スポンサー名も明かそうとしなければ、インフルエンサーたちに「ビデオ内でスポンサーがいることを口にしないように」と指示したのだ。これはどちらもフランスでは違法行為にあたる。(ニュメラマ)

◆高い報酬と脅迫
 危険な提案にショックを受けたインフルエンサーたちは、その内容をSNSで暴露した。たとえば、5月20日付サミのツイート全文は下の通りだ。「今朝受け取ったパートナーシップの話にショックを受けた。みんなにシェアしないわけにはいかない」「あるエージェンシーが、報酬つきで、ファイザーワクチンの信用を落とす記事をシェアし、その死亡率について語れと言ってきた」「簡単に言うと、そいつらは(バックに誰がいるのか僕は知らない)インフルエンサーやアーティストにプロパガンダと偽情報と引き換えにお金を払うと言っている」「だから、もしインフルエンサーやアーティストが、そういう内容をシェアしていたら、彼らはその糞情報を流すのと引き換えに金をもらっているかもしれないということだ。気をつけてくれ。ネット情報とは距離を保つように」。

 この一見「おいしい話」をインスタグラムで持ちかけられたアミンも、フォロワーに注意を喚起した。アミンは、その後フランスのオンラインメディア『Brut』のインタビュー内で「僕のインスタグラムは、医学に関する知識の普及や教えが主だ。アカウントを見たなら、こんな提案を僕が受け入れる可能性はまったくないとすぐわかったはずだ」と語っている。アミンによれば、提示された価格は、ストーリービデオで約2000ユーロ(約27万円)、研修医であるアミンの月給に匹敵する額だった。

 また、暴露ツイートのあと、アミンは匿名者からインスタグラムに次のメッセージを受け取ったことも明かしている。「2021年5月20日16時47分あなたがツイッターに投稿したメッセージに関して、刑法226-15条に定められた通信の秘密を喚起します。実際、電気通信によって発信、伝達あるいは受信した内容を開示した事実は、4万5000ユーロと1年の懲役によって罰せられます」という内容で、明らかに脅しといえる(Brut)。

Text by 冠ゆき