「内申点上げて」教師に圧力、不合格に異議も 激化するスイスの中高一貫校入試

シュヴィーツ州にあるギムナジウム「Kantonsschule Kollegium Schwyz」|Sander van der Werf / Shutterstock.com

 3月、スイス・チューリヒ州で、大学進学を目指す公立中高一貫校および高校の統一入試が終了した。両者ともギムナジウムと呼ばれ、合格した子供たちは夏休み後に新しい学び舎での授業が始まる。

 スイスの教育制度はドイツと似ており、中学校段階で2つの道に大きく分かれる。アカデミック系のギムナジウム進学か、実務系で「普通教育の中学校、その後は有給の実務経験と職業高校を並行」に進むかだ。実務系でも高卒で就職せず大学に進むケースは増えてきたが、ギムナジウムはレベルの高い内容を学ぶため学校生活も予習復習もハードだ。そのため、ギムナジウム進学者はいわゆるエリートととらえられている。

 近年、大学に進学したい子供(とくに女子)が増えており、チューリヒ州では最近ギムナジウムが2校開校し、全体の入学枠が2千人分も広がった。私立のギムナジウムは数が限られている。

◆小6受験は「内申点+入試」で判断
 ギムナジウム入試は、全国一律で実施されているわけではない。入試がない州では、小学校の担任が好成績の子供にギムナジウム進学を推薦する。

 入試を行う州は、各州が日程や受験科目を決めている。チューリヒ州の統一入試は、中学受験の「長期コース(中高一貫校)」用と、高校受験の「短期コース(高校のみ)」用の2つだ。州内統一入試が始まったのは約十数年前で、それまでは各ギムナジウムが独自に実施し、学校間で合格基準に差があった。 

 中学受験は、ドイツ語(国語)と算数の2科目の入試に内申点が加算される。高校受験だと入試科目が1つ増え、3科目の平均点のみで合否が決まる。

 中学受験のほうが負担は少ない。不合格の場合は普通の中学校に通い、高校受験できる。また、大学に行きたいかどうかを早く決めることができず、小6で受験はしないで高校受験を好む子供もいる。

Text by 岩澤 里美