中国の不可解なビザ申請条件緩和 マスクに続きワクチン外交展開か
◆そのほかの不明な点
それでは、中国製ワクチンが手に入り、中国がビザ申請緩和対象とする国・地域はどこか? そのリストには、トルコ、シンガポール、アルゼンチン、スリランカ、香港、インドネシア、メキシコ、チリ、ウルグアイ、パキスタン、インドネシア、タイ、フィリピン、ネパール、ラオス、カンボジア、モンゴル、ハンガリー、モロッコ、赤道ギニアなどの名が並ぶ。
ただし、これらの国に住む外国人(たとえばフィリピンに住むミャンマー人など)も同緩和の対象になるのかどうかはいまのところ不明のようだ(ストレーツ・タイムズ紙、3/16)。
また、「中国のワクチン」が、中国の会社のものを指すのか、中国で製造されたワクチンを指すのかもあいまいだ。中国外交部香港駐在事務所のサイトには、「中国で製造されたワクチン」とあるが、在米中国大使館のサイトには、「中国のワクチン」と書いてある。この違いは大きい。なぜなら、香港が最初に承認した独ビオンテック開発のワクチンは、上海復星医薬と共同で開発したもので、これが中国本土でも承認され、現地で製造されるようになれば、「中国で製造されたワクチン」の条件を満たすことになるからだ。
さらに、中国製以外のワクチンを接種した人の扱いをなんとするのかについても、中国外務省報道局の趙立堅は明言を避けている(中国外務省、3/16)。
◆マスクの後はワクチン外交
前述のル・プティ・ジュルナルが報じるように、香港居住の外国人は、ワクチンを接種すれば、中国本土と行き来ができることに喜びの声を上げている。ただし、中国本土に住む外国人は、まだしばらくワクチン接種証明書を手に入れることができそうにない。なぜなら、外国人は基本的にワクチン接種対象外という時期が続いたからだ。中国が開発した抗Covid-19ワクチンは、現在申請中のものも入れると4種あり、すでに27ヶ国に輸出し、53ヶ国に無償提供している(ロイター、2/24)。それだけの余裕がありながら、中国は同国に居住し税金を納める外国人にはワクチン接種の機会を与えていなかったのだ。ただし本稿執筆中の3月20日、外国人への接種を開始というニュースが流れたところなので、今後の展開に注目したい。
それにしても、中国のワクチン外交術。その影響の大きさは、マスク外交の比ではないかもしれない。
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