6月中に誕生か、欧州の「グリーン・パスポート」 概要と注目点

欧州委員会ティエリー・ブルトン委員|Virginia Mayo / AP Photo

◆指摘される問題点
 この案は、3月17日に欧州委員会に提出される予定だが、すでにいくつかの問題点が指摘されている。たとえば、オックスフォード大学のメリンダ・ミルズ教授は、ワクチン接種後の免疫効果がどのくらい続くのか不明であることを挙げ、「有効期限」の必要性を示唆するとともに、変異株に対する効果がワクチンによって異なることも考慮すべきではないかと考える。さらに、グリーンパスポートに含まれることになる個人の行動移動データがどれだけ守られるのかにも懸念を示す。(ユーロニュース、3/3)

◆EU未承認のワクチンは対象外?
 また、20 minutes紙(3/12)によれば、グリーンパスポートの対象となるワクチンは、EUで承認されているものだけだ。具体的には、現時点では、ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ、ジョンソン&ジョンソンの4社のもののみで、ロシアのスプートニクVや中国のシノファームは含まれない。

 ところが、EU加盟国でありながら、ハンガリーやチェコ、スロバキアは、EUの取り決めから外れて、ロシアや中国のワクチンを輸入接種している。スプートニクVに関しては、3月4日から欧州医薬品庁(EMA)が審査を始めたところだが、シノファームに関してはいまのところ何ら検討の動きはない。つまり、ワクチンを接種したにもかかわらず、グリーンパスポートで接種証明を得られないEU市民が出る可能性があるわけだ。このあたり、どのような解決策を準備するのか、注目したい。

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Text by 冠ゆき