ワクチン不安を煽る報道の問題
◆高齢者・重病人へのワクチン接種
冒頭のフランス・ソワールの投稿記事は、ノルウェーでワクチン接種を受けた高齢者のうち13人が亡くなったことを挙げている。1月15日にこれを発表したノルウェー当局は13人の死亡とワクチン接種の関係を疑い、調査を行った。その際、同国の薬剤局責任者は「発熱や吐き気といったRNAワクチンに一般的な副反応が、一部の脆弱な患者にとっては命取りになりえることを示したのかもしれない」(スプートニク、1/19)とも発言している。
実はこの話には続きがあり、ノルウェーの保健相は18日、「ファイザーとビオンテックのワクチンと13人の死には関連が認められなかった」と発表したのだ(同上)。なお、死因への直接的な影響がないにしても、このノルウェーの一連の発表は、高齢者や重病患者へのワクチン接種についての議論を呼び起こした感がある。スプートニクによれば、そのあたり、各メディアでも情報が錯綜しているようで、ビオンテックは「ノルウェー保健当局は末期患者のワクチン接種に関する勧告を変更した」と発表したが、のちにこれを撤回。ロイター(1/18)は「ノルウェーはワクチン接種に関する方針を変更しないと決定した」と報道し、ウエスト・フランス紙(1/19)は、ノルウェー当局は「高齢者や体の弱い人にはワクチンを接種する前に医学的検証を行うことを推奨する」と報じている。
◆メディアの役割、読者の役割
日本ではオリコンニュースが20日、新型コロナワクチンについて、女子高生100名を対象に行ったアンケート結果を発表。6割超が「受けたくない」と返答したという内容を、毎日新聞や朝日新聞、中日新聞などの全国紙や大手地方紙がこぞって転載したことに批判が集まった。これに関しては、産婦人科医の宋美玄さんのツイート「コロナワクチンについて充分な情報提供もなしに取ったアンケートをニュースにすることに何の意味があるのか。 目先のページビューは稼げるかも知れないが、世界中で日本だけコロナを克服できない未来にしたいのだろうか」が代表するように、メディアがまず果たすべき役割はワクチンに関する正しい情報をわかりやすく伝えることではないのか、と感じた人も多かったはずだ。
メディアはセンセーショナルなタイトルで人の目を集め、早合点し拡散する読者を作り出しているのではないか。一方でセンセーショナルなタイトルに頼るだけのメディアを作り出しているのはそういう読者でもある。良質な記事よりもデマのほうが拡散しやすいネット時代において、賢く情報を取捨選択することは、メディアを育てることにもつながることを覚えておきたい。
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