結婚による改宗に厳しく 一部州の「反改宗法」で逮捕者続出 インド

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 昨年12月19日、デリー近郊の新興産業都市、ウッタル・プラデシュ州のノイダで韓国人キリスト教徒1人とインド人3人が、同州で11月に施行された「反改宗法」に違反した容疑で逮捕された。警察は地元住民の告発に基づき、4人が金銭や物品を提供する見返りとして人々にキリスト教への改宗を迫ったと発表したが、4人とつながりのある支援団体の関係者やキリスト教系メディアはこの告発を「虚偽」と非難。州政府や警察、メディア、人権団体などを巻き込む騒動に発展した。

 今回の逮捕は、ウッタル・プラデシュ州で11月28日に施行された「違法な改宗禁止条例2020」(Prohibition of Unlawful Religious Conversion Ordinance, 2020)に基づいている。同州における強制または詐欺的な改宗を防止するための条例で、12月29日付のインディア・トゥデイ誌(電子版)によれば、この条例に違反した容疑による逮捕者は施行後わずか1ヶ月で50人を超えた。逮捕者の多くは、ヒンドゥー教徒の女性との結婚や恋愛にあたり、「違法な方法」で相手に改宗を迫ったイスラム教徒の男性やその家族とも言われており、同条例の下では、改宗が目的の結婚は無効とされるだけでなく、有罪判決が下されれば最長で10年の懲役刑が科されるという。

◆さまざまな州で施行されている「反改宗法」
 インドの「反改宗法」は一部の州が制定・施行しているものであり、憲法で「信教の自由」を保障している国の法律ではない。米国議会図書館が所蔵する資料によれば、インドで改宗を制限または禁止する関連法の歴史は英領植民地時代の1930年代にまで遡る。ヒンドゥー教系の統治者が率いていた一部の藩王国が、英国の宣教師から彼らの宗教的アイデンティティを守るために制定した。代表的なものとして、ライガル藩王国の「Raigarh State Conversion Act」(1936年)、スルグジャ藩王国の「Surguja State Apostasy Act」(1942年)、ウダイプル藩王国の「Udaipur State Anti-Conversion Act」(1946年)などがある。

 1947年のインド・パキスタン分離独立後から現在に至るまでも、オリッサ州の「Orissa Freedom of Religion Act」(1967年)、マディヤ・プラデシュ州の「Madhya Pradesh Freedom of Religion Act」(1968年)、アルナーチャル・プラデシュ州の「Arunachal Pradesh Freedom of Religion Act」(1978年)、タミル・ナドゥ州の「Tamil Nadu Prohibition of Forcible Conversion of Religion Bill」(2002年)、グジャラート州の「Gujarat Freedom of Religion Act」(2003年)、ヒマーチャル・プラデシュ州の「Himachal Pradesh Freedom of Religion Act」(2006年)、ウッタラーカンド州の「Uttarakhand Freedom of Religion Act」(2018年)など、多くの州で同種の条例が制定されたり、または過去の条例が改定されたりしてきた。なかにはすでに廃止された条例もあるが、最新の動きとしては、ウッタル・プラデシュ州に続き2020年12月18日にヒマーチャル・プラデシュ州で「Himachal Pradesh Freedom of Religion Act, 2019」が、今月9日にはマディヤ・プラデシュ州で「Madhya Pradesh Freedom of Religion Ordinance, 2020」がそれぞれ施行されている。

 注目したいのは、昨年11月から今年にかけて施行された3州(ウッタル・プラデシュ州、ヒマーチャル・プラデシュ州、マディヤ・プラデシュ州)の新しい「反改宗法」では、結婚による改宗を厳格に取り締まるようになったことだ。宗教が異なる男女が結婚・改宗する場合、30日または60日前(州によって異なる)に役所の管轄部署に書面で届け出ることが求められ、改宗の経緯などの調査が行われた後に結婚の可否が判断される。

 ただし、これら条例は結婚による改宗を全面的に禁止しているわけではない。強制や詐欺、(金銭や物品などの)誘惑ではなく、本人の意思で改宗を望んでいると証明さえすれば、何ら問題なく結婚・改宗できる。それでも条例によって手続きは複雑になっており、ただでさえ異宗婚への差別や偏見が根強い同国では、当事者たちにとっては大きな圧力となるのは間違いない。しかも前述したように、ウッタル・プラデシュを含む一部州では同条例の違反容疑で多数のイスラム教徒が逮捕されているため、識者や人権団体から「反イスラム政策の一環だ」などと批判が出るのは当然だろう。

Text by 飯塚竜二

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