中国は本当に「危ない」のか? 他国と異なる「ロックダウン」の意味

石家荘市、1月6日|Mu Yu / Xinhua via AP

◆中国感染者数推移とロックダウン経緯
 上に挙げたようないくつかの集団感染例を除けば、中国本土の感染者数も長く一定していた。12月前半は一日に1桁から20人前後の感染例が報告されるのみで、それも大半が外からの入国者だった。その傾向に変化が現れたのがクリスマスの時期で、北京北東にある遼寧省で6人以上の感染者が4日続いて確認された。これを受け、当局は早くも12月28日に遼寧省の省都瀋陽を中リスク区域に指定した。だが、それと並行して北京市や中国北東端にある黒竜江省、さらには北京を取り巻く河北省でも一日1~5人の感染者が確認されるようになり、当局は1月4日、合計49の市町村を中リスク区域指定するに至る(中国中央テレビ局(CCTV)1/5)。ところがさらに同日、河北省で新規感染者が14例、翌5日には20例確認されたため、同省石家荘市の小果庄村を高リスク区域に指定し、厳しいロックダウン下においた。「戦闘モード」と呼ばれるこのロックダウンにより、幼稚園と学校の対面授業は中断され、住民すべてを対象としたPCR検査が6日から始まった(『SHINE』1/6)。

 春の武漢のインパクトが大きかったせいか、「中国でロックダウン」と聞くと、つい恐怖心が煽られることが多いが、このように現在唯一高リスク区域に指定されている地域でさえ、感染者数は3日間(1月2日~4日)で19例しかない。

 もちろん、公式発表された数字がすべてではないことは確かであり、とくに、中国では無症状陽性者を感染者と数えないので注意が必要だ。1月4日に14例を数えた小果庄村では、同時に30人の無症状ケースも出しているし、それに先立つ1月2~4日の河北省の新規感染者数は19人とされているが、この間、無症状例も40人確認されている(『SHINE』)。他国の現状と比べるときは、この点を考慮する必要がある。

◆地方当局ごとの基準
 中国の新型コロナ対策の特徴のひとつに、地方当局ごとの違いが挙げられる。入境者に課される条件も、基本的には省や直轄市(北京市や上海市など、中国の「直轄市」は「省」と同等の一級行政区)それぞれが定めるものだ。たとえば北京市は、当初より北京行きのすべての国際航空便を別所に着陸させて検疫を実施し、条件を満たした者だけに北京への移動を許可するなど、入境者のハードルを実に高く設定していた。いまも1月5日からは、14日の隔離集中監視期間に加え、さらに7日間の自己隔離期間を入境者に課している(人民日報、1/5)。感染拡大地域に近い大連も同様に14日+7日の隔離期間を課すことを決めていて、隔離期間中「1、7、13、20日目に計4回の検査が義務づけられており、すべてが陰性であるときだけ、検疫解除となる」(CCTV)という厳しさだ。

 これらの例を見てもわかるように、中国は感染者数が2桁になった時点で素早く動き、徹底的な検査、厳しい封じ込めと隔離政策を取っている。言い換えればロックダウンは当局の対応の迅速さを示すもので、決して「最後の手段」として用いられているわけではないのだ。このあたり、4桁に上る感染者急増時にもなかなか動こうとしなかった日本との違いといえよう。海外から見れば、いまは明らかに日本のほうが中国より感染リスクの高い「危ない」地域なのである。

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Text by 冠ゆき