日本もスウェーデンと同じ罠に? コロナ対策失敗は「例外主義」が生む過信
◆日本も同じ? 「我々は特別」は落とし穴
いまの状況の原因は、自国は特別だというスウェーデンの「例外主義」だという声がある。米保守系メディア『ディスパッチ』に寄稿したライターのヨハン・グスタフソン氏は、スウェーデンの例外主義とは、自国だけにはどんな災害が起こっても影響を受けないという考えだと説明する。歴史的に見ると、スウェーデンは1814年以来戦争を経験したことがない。第二次世界大戦後は欧州各国がNATOに参加するなか、中立を掲げ平和を享受した。これに自己満足し、戦争はもちろん、どんなタイプの災害にも準備なしで来てしまったとしている。
当局が深刻さを過小評価してしまったのも、パンデミックがスウェーデンを襲うとは思わなかったからだとする。テグネル氏の予想はことごとく外れており、こんな成績の悪い指揮官と政府に怒りが向けられるのは当たり前なのに、10月時点で両者の支持率は高かった。悪いことが起こるはずはないという信念を再確認することは、スウェーデンの素晴らしい政治戦略だとグスタフソン氏は皮肉る。
国内からも批判の声が上がる。スウェーデンのルンド大学のポール・オシェア氏は、ローベン首相はロックダウンよりflokvett(良いマナー、道徳性、常識を混ぜ合わせたもので、すべての良きスウェーデン人に生まれつき備わっているとされる)で、当局の推奨に従うことを求めたと指摘。世界から不十分だと批判されたが、7月に感染者と死者の数が落ち着いたことで、自国が正しかったというムードになり、結局同じ対策を維持していまの再感染拡大を引き起こしたとしている(学術ニュースサイト『カンバセーション』)。
同傾向にあるのが日本だとオシェア氏は指摘する。自粛で第1、2波を乗り切って、当時の安倍首相はその成功を「ジャパン・モデル」と呼び、副首相の麻生氏は日本人の「民度」の高さの結果だとした。日本文化の独特さや清潔さも成功の一因とされた。しかしこの例外主義の成功が慢心を生み、現在は厳しい第3波に襲われているのにやり方を変えることなく、Go Toトラベルも一時停止に留めている。日本の状況はスウェーデンよりずっといいが、公衆衛生の問題に例外主義で対応することは危険だとし、他国から学ばない、対応の変更が困難になるなどの悪影響を指摘している。
◆例外主義では手に負えない 次のパンデミックに備えるには
感染状況の悪化を受けて、スウェーデンは18日に新たな対策を発表した。プールや図書館など必要不可欠ではない場所の閉鎖を決め、レストランの利用人数も8人以下から4人以下に変更される。マスクについても、特定の時間帯での公共交通機関利用時の着用が推奨となる(スウェーデン版『ローカル』)。
より強いパンデミック対策を政府が取れるよう法改正も進めているが、可決されても3月15日から発効となり、しかも1年間の時限措置だ。『ディスパッチ』のグスタフソン氏は、これでは高齢者のワクチン接種のほうが先に始まってしまうが、寛大に解釈すれば、未来のパンデミックへの枠組み作りにはなるだろうと述べる。次のパンデミックに上手く対応するには、「スウェーデンは無敵で今回は例外」という考えを捨てることだとしている。
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