欧州一被害の少ないフィンランド、その要因は? コロナ第二波

Markku Ulander / Lehtikuva via AP

◆国民性の影響の大きさ
 アプリのダウンロード数の多さからもうかがえるが、「フィンランド当局は(国民から)高いレベルの信頼を得て」いるし、「フィンランド人は規則を遵守する」民族であるとウエスト・フランス紙は指摘。加えて、「控えめで孤独を好むといわれるフィンランド人の性格」も外出制限生活を支えるのに役立ったと考えられる。

 フィンランド人らしさを感じる例のひとつに、外出制限中フィンランド人指揮者アッツォ・アルミラが投稿したツイートがある。自宅と思われるバルコニーで指揮棒を振る同氏の動画には、「少々寒いですが、フィンランドからのご挨拶! シベリウスのフィンランディアのエンディング部分のエアー指揮です。音楽は各自が頭の中で鳴らすように!(誰の邪魔もしたくありませんからね)」と言葉が添えられている。つまり、この動画には肝心の音楽が入っていない。同時期、イタリアやスペイン、フランスで、バルコニーが賑やかな舞台として脚光を浴びていたことを思うと、発想の違いが明らかだ。日本人としては、むしろフィンランド人の感覚のほうが親しみやすいのではないだろうか。

 さて、最後につけ加えておきたいのは、フィンランドの首相が女性であり、サンナ・マリン首相率いる内閣の半数以上が女性閣僚で構成されていることだ。一説に、新型コロナ危機への対応は女性リーダーの国のほうが優れているといわれるが、フィンランドもまたその例のひとつではなかろうか。

 コロナ対策成功の要因と考えられる点をひとつずつ見てくると「国民性」の影響の大きさに驚かずにはいられない。同じ制度を敷いても、国民が政府に寄せる信頼の度合いや、国民自身の性質いかんで、結果はまったく異なるのだ。

 ヨーロッパの第二波はまだまだこれからが本番と言われている。どの国の被害もできるだけ少なく済むことを願いたい。

Text by 冠ゆき