米国の分断 「今後10年の脅威」調査に見る共和、民主支持者の隔たり

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◆共和党支持者は中国警戒、国家安全保障を重視
 共和党支持者の間で中国への警戒心が高まっていることが、この結果からも十分読み取れる。貿易摩擦などこれまでの米中対立が、新型コロナウイルスの感染拡大によってさらに拍車がかかっていることは間違いないだろう。トランプ大統領は中国批判を強めているが、それは多くの共和党支持者も支持している。イランや北朝鮮への脅威も過半数となったが、やはり中国への警戒心は一つ抜き出ている。

 依然としてテロへの警戒も根強い。国際テロとはアルカイダやイスラム国などジハード主義組織の脅威を指し、国内テロとは白人至上主義やネオナチなど極右テロを指している。ジハード組織は米国を狙うほどの能力はないとみられるが、依然として米国への攻撃を呼びかけている。近年極右テロの脅威が欧米世界で大きな問題になっており、米国内でも事件が増加傾向にある。

 また、「移民・難民の大量流入」からは、白人層の黒人やヒスパニック、イスラム教徒やアジア系への排斥主義というものがコロナも影響して高まっていることが想像できる。

◆民主党支持者はグローバルな問題を重視
 一方、民主党支持者は感染症や地球温暖化、人種差別など、よりグローバルな問題を重視する傾向にある。黒人やヒスパニックなど非白人層は伝統的に民主党支持者の多くを占めるが、「人種的な不平等」「国内の経済格差」「国内政治の分断・分裂」などはそういった非白人層の意見が大きく反映されているように感じる。

 だが、米中対立が先鋭化するなか、民主党支持者の間でも中国が上位にランクインしていないことには驚きだ。バイデン候補は大統領になっても、中国に対しては厳しい姿勢で臨むと公言しているが、こういった民主党支持者の意見がどうバイデン外交に影響を及ぼしていくかも注目される。いずれにせよ、今回の調査結果からは共和党支持者と民主党支持者で脅威認識がまったくと言っていいほど違うことが改めて浮き彫りとなり、分断・分裂が進むアメリカというものを示す結果となった。

Text by 和田大樹