仏ボルドー、恒例のクリスマスツリー中止 台頭する環境派市長が「伝統」と衝突

joserpizarro / Shutterstock.com

◆クリスマスツリーの経済的重み
 だが、ボルドーのクリスマスツリー騒動は、ブルゴーニュのモルヴァンに飛び火した。緑豊かなモルヴァンでは、フランス3(9/14)によると、1500ヘクタールに約100万本のクリスマスツリーが育てられているからだ。これはフランスで売られるクリスマスツリーの4分の1にあたるという。「モルヴァンは、クリスマスツリーを中心に生きている。うちはクリスマスには近隣の村から25人臨時に人を雇う。それで、レストランもパン屋も潤い、土地の経済が成り立っているんだ」(同)と、年4万5000本のクリスマスツリーを売る生産者が強調するように、ツリー生産販売の継続はこの土地では死活問題だ。エコロジストがクリスマスツリー廃止にこだわるならば、ツリー生産に携わっている労働力の受け皿も今後準備する必要がでてくるということだろう。

 ところで、ボルドー市長の決定に反応した政治家のひとり、オー・ド・フランス地方議会長グザヴィエ・ベルトランは、「我々を結びつけるクリスマスツリーやツール・ド・フランスなどの伝統は、常に社会の礎である」とツイートした。確かに、伝統や象徴には人々を団結させる力がある。これを排し、エコロジストが提供するのは何か。社会はこうあるべきだという理念であろうか。いったい、理念は伝統にとって代われるものなのだろうか。エコロジストにとっても正念場はこれからだ。

Text by 冠ゆき