仏ボルドー、恒例のクリスマスツリー中止 台頭する環境派市長が「伝統」と衝突

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◆クリスマスツリーは「死んだ木」とボルドー市長
 同じくエコロジストが市長となったフランス南西部ボルドーでは、毎冬大聖堂の前に立てるクリスマスツリーを今年は立てないと9月10日発表した。ピエール・ユルミック市長の政策には町全体の植物を増やす計画があり、「死んだ木」であるクリスマスツリーは、その計画に入らないと考えるのだ(フランス3
9/11)。

 しかしながら、この決定は大きな波紋を呼んでいる。なんといっても、クリスマスは家族が集まりともに心安らかに過ごす時間で、フランス人の多くにとって欠かすことのできない行事である。日本でいえば正月のようなものだ。そして、クリスマスツリーはそのクリスマスの象徴の一つである。

 ボルドー市の決定に賛成の声がないわけではないが、市民からは失望の声も少なくない。また、この決定を遺憾とする政治家たちの反応も相次いでおり、ユルミック市長は仏国営テレビ、フランス3の番組内で「これほど暴力的な批判に晒されるとは思わなかった」(同)と驚いてみせた。さらに、自身のツイートでクリスマスツリーの運搬や維持に6万ユーロかかることに言及し、浮いた予算で「死んだ木」ではなく「生きた人間によるショー」を企画する心づもりを述べている。

◆ストラスブールはいかに?
 ボルドーの決定を受けて人々の目が向いたのは北東部にあるストラスブールである。ストラスブールは、1570年以来の伝統を持つフランス最古のクリスマスマーケットが開かれる町だからだ。毎年グラン・ディル(旧市街)の中心に飾られる高さ30メートルのクリスマスツリーの存在感は相当なものだ。クリスマスとそれにまつわる風習はフランス全土で愛されているが、ストラスブールでは町のアイデンティティを形作るひとつでさえある。そうして、このストラスブールに新たに就任した市長もEELV所属のエコロジストなのである。万が一同市がボルドーに倣ってツリー廃止を決めれば、間違いなく激しい抗議運動が起こるに違いないと、みな密かに固唾をのんだ。しかし、ストラスブール市長は「クレベール広場に伝統のクリスマスツリーが立つのを見たいと願っている」とコメントを出し(フランス3、9/11)、とりあえずクリスマスツリー騒動は回避された。

Text by 冠ゆき