日本の接触通知アプリの利用は少ない? 欧州諸国と比較

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◆使用者数の伸び悩む国
 それと比べて使用者が予想より増えないのがフランスやイタリアだ。

 フランスのStopCovidは、「8月半ばの時点で、230万回ダウンロードされ、その4分の1はアンインストールされた」(チャレンジ誌、9/8)。フランスの人口6700万人強に占める割合は2.5%とかなり低いものだ。また、「1169人の陽性者登録があった時点で、アプリが通知したのは72件」(RTL)にすぎず、StopCovidは失敗だったという苦い認識が国民間に広がりつつある。中央集中型を選択したフランスのStopCovidのサーバー維持にかかる費用は月20万ユーロというのだから、なおさらだ。

 6月15日にリリースされたイタリアのアプリImmuniのダウンロード数は「9月6日の時点で約540万(『ネットワーク ディジタル360』9/7)」で、これは人口の9%、スマートフォンを持つ人の14%にあたるという。フランスと比べれば高い数値だが、全人口に占める利用者の目標割合を60%としてきた政府にとっては、きわめて低い。しかし、イタリアの技術革新デジタル化大臣パオラ・ピサーノは、「アプリにより、ひとりでも救われるのならば、それは成功だ」(『Euractiv』7/24)とも発言し、アプリの意義を強調する。

◆リリース遅れの国々
 バカンス前のアプリ運用開始が叶わなかった国も少なくない。

 ポルトガルでは9月頭にようやくアプリがリリースされたところだ。しかし、早々に「互換性がないため、約80万台の携帯電話にアプリをインストールできない」(RTL)ことが明らかになるなど、普及への道はすでに険しい。

 ベルギーのアプリCoronalertのダウンロードは9月20日の週に開始される予定だ。Coronalertも、ヨーロッパのアプリの多数派同様、グーグルとアップルのAPIをベースにしたアプリである(『iGeneration』9/7)。

 4月という早い時期にアプリをリリースしながらも、データ保護機関の糾弾を受け6月に運用を中断したノルウェーでは、新たなアプリ開発を行っておりクリスマス前にリリースしたい考えだという(RTL)。

 イギリスは、6月半ばそれまで開発してきた中央集中型アプリを断念し、分散型アプリに方向転換したが、いまのところアプリは完成していない。ただ、「北アイルランドだけは独自のアプリを開発し7月31日にリリースした。8月26日の段階で30万回ダウンロードされている(RTL)。これは、北アイルランドの人口188万人の16%弱を占める。

Text by 冠ゆき