フランスのシリコンバレー?! パリ・サクレー大学の高まる評価と期待

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◆目指すはフランスのシリコンバレー
 それにしても、誕生したばかりの大学が、どうやって、上述6つの指標で点数を稼げたのか?

 それは、パリ・サクレー大学の中身が、既存の大学3校とグランゼコール4校にフランス高等科学研究所(IHES)を併せたものだという事実で説明できる。グランゼコールというのは、大学とは別に存在するフランス独自の高等教育機関だ。グランゼコールすべてに当てはまるわけではないが、学校によってはいわゆる「大学」を凌駕するエリート養成機関である。パリ・サクレー大学に加わったグランゼコールは、パリ・サクレー高等師範学校(ENSパリ・サクレー)、セントラル・スペレック(CS)、光学高等研究所(IOGS)、アグロ・パリ・テックの4校で、それぞれの分野において権威あるグランゼコールなのだ。

 同キャンパス創設の構想は、すでに2000年代には生まれていたという。科学技術観測所名誉会長であるピエール・パポン氏は、「外国で注目されることの少ない、フランスの科学研究と技術革新のイメージを高めることを目的とした決定」だったと語る(ラ・クロワ紙、8/17)。つまり、カリフォルニアのシリコンバレーやイギリスのケンブリッジ地域に匹敵する国際的なセンターを目指した結果がパリ・サクレー大学といえるわけだ。

 現在学生4万8000人、教員・研究員8100人、職員8500人を数えるパリ・サクレー大学ながら、最初の大学一年生を迎えるのは2020年9月ということになる。フランスのシリコン・バレーのこれからに大いに注目したい。

Text by 冠ゆき