緊急避妊薬、米では自動販売機でも 処方箋なしで購入できる北米

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◆カナダ、医療当局が市販化の動きをサポート
 一方海外では、緊急避妊薬は19ヶ国で市販化されており、その他76ヶ国で薬局の薬剤師を通じて処方箋なしで購入することができる。とくに北米では、カナダ、アメリカともに年齢制限なしで薬局での購入が可能だ。両国とも以前は処方箋が必要で、市販化解禁までに数年かかっている。

 カナダで緊急避妊薬が薬剤師への相談を通じて購入できるようになったのは2005年。地元有力紙のトロント・スター紙によると、先駆けて行われた2002年の社会実験で約7000人が薬局で緊急避妊薬を買い求め、24時間以内に服用した人の95%に効果があった。またCBCによると、この動きにはカナダ産科婦人科学会やカナダ医師会、カナダ薬剤師会など多くの医療当局のサポートがあった。

 その後も提言活動が続けられ、2008年に完全市販化が実現した。現在は、風邪薬など一般的な薬と同じように誰でも購入することができる(一部の州では薬剤師への相談が必要)。価格は約30〜40ドルほど(約3000円前後)だ。
 
 カナダでの避妊をめぐる議論はその後も続いており、昨年5月にはカナダ小児科学会が25歳以下の若者がコンドームを含むすべての避妊用具を無料で購入できるようにと訴えた(CBC 2019年5月)。

◆アメリカ、大学内に自動販売機設置も
 アメリカでは2006年当時、「若い女性が適切に服用できるか判断できない」として、薬剤師を通じずに購入することができるのは18歳以上とされていた。その後、年齢制限は17歳に引き下げられたが、2009年に政権を握った民主党のオバマ政権は、年齢制限撤廃に反対の立場をとり続けた。オバマ前大統領は当時、「二人の娘の父親として、市販化に対する規制は常識を持って考えることが重要だ」とコメントしている(ワシントン・ポスト 2013年6月)。女性の権利擁護団体などは、未成年女性への避妊薬販売を阻止しようとしているとして政権を批難していた。

 その後、政府と裁判所の闘いを経て2013年に年齢制限が撤廃された。現在は、より迅速なアクセスを目指す取り組みが各所で実施されている。2017年には、スタンフォード大学などが緊急避妊薬や避妊具が購入できる自動販売機を学内に設置した(ニューヨーク・タイムズ 2017年9月)。

Text by 中原加晴