日本ではなぜ落とし物が戻ってくるのか? 海外メディアが原因を分析

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♦︎実は良心からではない?
 落とし物が届けられる理由としては、ほかに日本人固有の正直さをあげたいところだが、BBCの見方はやや異なるようだ。記事は日本人が悪気なく他人のビニール傘を拝借してしまう例をあげ、必ずしも日本人のモラルが優れているわけではないことを示唆している。別の例として、東日本大震災では自分を犠牲にして助け合う人々が多くいた一方で、残念ながら住民が退避した後の避難指示区域を狙った侵入窃盗が発生した。前出のミシガン大の教授はこうした事象をあげたうえで、集団でいると助け合うが、人目のないところでは必ずしも良心が働くとは限らないという主張を展開している。逆説的に捉えれば、コミュニティの視線が届く限りはモラルが守られるといったところだろうか。

 シティ・ラボ誌は日本の法制度に注目しており、遺失物法第28条の規定により落とし主から拾い主に5%から20%のお礼(報労金)が支払われる、と伝えている。3ヶ月経っても落とし主が現れない場合は、拾い主は正式に所有権を得ることも可能だ。

 財布の8割から9割が戻ってくるという安全な社会環境は、幼少期からの教育、交番システム、そしてコミュニティからの視線に遺失物法と、多くの要素に支えられているのかもしれない。

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Text by 青葉やまと