日本式「家計簿」が海外で脚光 「想像以上にお金貯まる」「家計に魔法」と驚きの声

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♦︎欧米でチャレンジ、確かな効果を実感
 実際に家計簿に挑戦してみたという海外の人々からは、効果を実感する声が出ている。サラ・ハーヴィー氏は新鮮な体験を求め、ロンドンから日本に移り住んだという女性だ。東京で出版コンサルタントとして働き、また、日本の「改善」の習慣を紹介する本を著している。彼女はCNBCへの寄稿記事(1月8日)のなかで、日本に住んで半年ほど経つころには「日本での日々の暮らしにおいて、ささいなディテール、ものごとの質に注意を傾けること、そして改善の積み重ねがいかに重視されているかについて、心を奪われるようになっていた」と振り返る。もともと衝動買いのクセがあった彼女は、このように細部に気を配り詳細を記録する家計簿という習慣を知り、ぜひ挑戦してみようと考えたという。家計簿をつけることでお金の使い道への意識が高まり、彼女の預金残高は目に見えて増えるようになった。「貯蓄は想像していたよりも速いスピードで増えている」「さらに大切なことに、こうして蓄えたお金を本当に重要なことに使うよう、より賢明な判断をするようになった」と家計簿の効果を語っている。

 海外誌の読者からの反応も好評だ。リファイナリー29の記事への読者コメントには、「私の母は家計簿を使い、家計に魔法をかけた。日本の古き倹約法だ」との書き込みがあり、限られた退職金を有意義に使うことができているとの喜びの声が寄せられている。

 フリーライターのJRソープ氏も、家計簿に挑戦してみた人々のひとりだ。家計簿でお金を貯めて家を買ったという友人夫婦に勧められて始めてみた、と自身の体験をバッスル誌の記事のなかで綴っている。始める前は、思わぬ浪費癖が明らかになったらどうしようと考えてしまい、漠然とした怖さがあったという。しかしいざ始めてみると、予想よりも支出が少ないという嬉しい結果が見えた。フリーランスである彼女はカフェで緑茶をたしなむのがお気に入りで、飲食関係の浪費が多いと予想していた。しかし毎月の支出をまとめることで、それほど大きな額にならないことに気づくことができたという。ふだんから倹約家の人々にとっては、家計簿のプロセスが自信をもたらしてくれることになるようだ。

♦︎記録から生まれるマインドの変化
 家計簿をつけるだけではただの記録に過ぎないが、そこからお金の使い方に関する意識の変化が生まれることで、いっそう衝動買いに歯止めがかかるようだ。ハーヴィー氏は具体的に意識したいポイントとして、欲しいと思っても24時間待ってみること、セールに踊らされないこと、残高を定期的に確認すること、キャッシュで支払うことなどを挙げている。

 リファイナリー29誌に寄稿するジャッキー・アガット氏は、家計簿をつける際の心構えをアドバイスしている。彼女によると、節約するというよりは、支出をコントロールするという意識を持つと良いようだ。節約は退屈で長続きしないが、本当に欲しいものだけを計画通りに買うというチャレンジなら続けやすい。また、家計簿用のアプリなども出ているが、収支にていねいに向き合うためには、やはり紙とペンを使って記録をつけることを彼女は推奨している。これによりいっそうマインドが高まるとのことだ。賢い支出ができたかを月末に振り返らせてくれる家計簿は、シンプルながら強力なツールとして支持を集め始めているようだ。

Text by 青葉やまと