新型コロナはどのように収束するのか 過去の感染症が辿った道

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◆防御策の効果が高かったコレラ・チフス・アルゼンチン出血熱
 感染者の隔離、手洗い・うがいの励行、マスクの着用、ソーシャル・ディスタンスの保持などの防御策は、過去においても多くの感染症の弱体化に成功している。たとえば、汚染された水で広がるコレラは、衛生状況の改善により世界のいくつかの地域から姿を消した。とはいえ、安全な水のない環境では感染再発の恐れが残る。実際、ハイチでは2010年の地震のあと、飲料水へのアクセスがなくなったことから、コレラが再流行した。

 テルアビブ大学教授らが、7月24日米科学誌サイエンス・アドバンスに発表した研究によれば、第二次世界大戦中のワルシャワのユダヤ人ゲットーも、隔離や衛生改善などの防御対策により、発疹チフスの流行を回避するのに成功した。発疹チフスは、シラミ、ダニ、ノミを媒介にして感染し、高熱を引き起こしときに死に至ることもある病で、当時、「ロシアでは3000~4000万人が罹患し、300~500万人が死亡していた」(科学と未来誌)。

 アルゼンチン出血熱も感染源に対する防御策が功を奏した例だ。当初は、ウイルスの宿主であるネズミからどのようにヒトに拡がるのか感染ルートが謎であった。だが、感染の始まりが「コンバインハーベスターの導入(時期)と一致する」(フランス・アンフォ、5/19)ことから、コンバインに巻き込まれたネズミの体液により農業従事者が感染したと知れ、「(農業従事者)のマスク着用により封じ込めが可能となった」(同上)のだ。

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Text by 冠ゆき