新型コロナはどのように収束するのか 過去の感染症が辿った道
SARS-CoV-2ウイルスが原因で起きる新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の収束が世界中で願われるいま、ワクチン完成への期待が高まっている。しかし、過去の感染症の流行の変遷を振り返ってみると、ワクチンが完成したものも、撲滅されたものも意外に少ないことがわかる。
感染症の終わり方のおもな要因として、フランスの医療情報サイト『ドクティッシモ』(5/25)は、「病原体の変異、媒介生物の消失、防御対策の効果、集団免疫(の獲得)、ワクチンの開発、気候」などを挙げるが、多くの場合、ひとつの疫病の弱体化には、複数の要因が重なっている。
◆病原体の変異、宿主・媒介の消失:梅毒・ペスト・ジカ熱
フランス・アンフォ(5/19)は変異によって弱体化したものに梅毒を挙げる。一方、ペストのように変異によって致死性を増すなど、逆の効果を持つこともあるので注意が必要だ。
「保有宿主・媒介になる生物の消失」の例としてはペストが挙げられる。14世紀から18世紀にかけてヨーロッパを襲ったペストは、宿主であるクマネズミからノミを介して人に感染したが、このクマネズミが、ドブネズミにより駆逐されたことが、ヨーロッパの流行を止める大きな一因となった。ただし、クマネズミもペストも地球上から消えたわけではなく、マダガスカルなどでは時折再発を繰り返している。
媒介生物を駆除することで流行を抑えることも可能だ。蚊によって感染するジカ熱の場合、2015年、中南米とカリブの約30数ヶ国で感染流行をおこし、もっとも被害の大きかったブラジルだけで、5万~150万人が感染したと推定されているが、蚊の駆除により流行を食い止めることができた。ただしウイルスの根絶には至ったわけではない。
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