高層マンションから降るゴミ、中国で問題に 豆腐、犬糞、自転車も

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◆刑法では死刑も、犯人の特定困難
 最高人民法院のガイドラインでは、高所から故意に物を投げる行為は犯罪と見なされる。たとえ深刻な結果にならなかったとしても、公の安全を脅かすに十分と見なされれば、容疑者は有罪となり懲役3年から10年の判決を受けるものとされる。深刻な怪我や死を招いた場合、または公共、個人の財産に大きな損害を与えた場合は、終身刑か死刑もあり得る。過失の場合でも、深刻な怪我や死に繋がれば、刑法では有罪とされる(中国国営メディア新華社)。

 しかし、ほとんどのケースでは、被害者は示談か民事訴訟で金銭的補償を求めるという。2016年から2018年の間には、高所からの落下物に関する刑事事件は31件で、その半数は死亡事件だった。同時期には1200件の民事事件が起きており、その30%は傷害事件だったという(インクトーン)。

 犯人を捜し賠償を求めようとしても、証拠を探すのは困難だという。前述の犬の糞の場合は、警察が高層アパートの上階で犬を飼っている世帯を特定したが、飼い主は犯行を否定し、被害者も十分な証拠を集められなかった(インクトーン)。豆腐の場合も、結局被害者が自前でガラスを修理している。犯行を立証することが困難なため、裁判所が一部の被害者に集合住宅全体を訴えることを許可し、住人全員が賠償金を分割して支払ったケースがある。共同責任を負わせることで、物を投下する前に罪のない隣人たちに責任が及ぶ可能性について考えさせ、犯行を思いとどまらせることができるのではないかと、WSJがインタビューした弁護士は話している。もっともインクトーンによれば、不公平と考える人も多く、実際に実施されることはまれだという。

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Text by 山川 真智子