「笑いのない」コメディが伝える真実とは

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 COVID-19からのフィジカル・ディスタンスをきっかけに、オンライン上のコンテンツがよりいっそう盛り上がるなか、米国で人気のあるコメディ番組も、ホストやスタッフが隔離しながら制作し、多くが自宅からの発信を続けている。一時的と思われた措置が継続するなか、こうした番組が発信する「ニューノーマル」について考察する。

◆リモート発信が新しい「親近感」を生む
 米国には多様なコメディ番組が存在する。多くのコメディアンの登竜門的な存在でもあり、もっとも有名な番組の一つが、1975年から継続するNBCの『サタデー・ナイト・ライブ(SNL)』。SNLは毎回「ホスト」という形で各界のセレブリティを迎え、レギュラー出演者とともに社会風刺的なコメディ・スキットを展開する番組だ。ほかに人気があるのが、コメディアンらの看板番組。たとえばトレヴァー・ノア、ジミー・キメル、スティーブン・コルベール、セス・マイヤーズらがホストを務め、毎日放送されるレイトショーは、時事ニュースを受けての風刺モノローグと、旬のゲストを招いてのインタビューが主要内容で、一般大衆にとって影響力を持つ情報源だ。

 COVID-19を受けて、米国でもリモート・ワーク体制がしかれるなか、これらの番組も影響を受けた。前述のSNLは、第45シーズン、最後の3話を『SNL At Home』として配信。その初回のSNL At Homeで自宅から出演したゲストは、「アメリカの父」的な存在であり、COVID-19から回復を果たしたトム・ハンクスだった。一方、レイトショーの多くも、その番組名を少し変更し、ホストの多くが自宅の「簡易スタジオ」から配信を続けている。視聴者は、有名人の自宅の様子や、彼らの家族やペットの登場といった、いままでにはないエンターテインメントを思わぬ形で享受することとなった。

 結果、リモートが新しい親近感を醸成している。ホストやゲストの多くは、スーツやドレスではなく、文字通り普段着で出演し、自宅ならではと言える「素」の様子が露わになっている。さらに、ホスト、ゲスト、視聴者が同等に、それぞれの「画面」に向かうことで連帯感が生まれたり、豪華ゲストが複数登場したり、視聴者もテレビ会議で参加したりと、リモートという制約が、作り手と受け手の距離感を近づけている。

Text by MAKI NAKATA

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