“マスク嫌い”のフランス、ついに屋内での着用義務化
◆フランスとマスク:これまでの推移
マスク着用への抵抗が強かったフランスも例外ではない。フランス政府は新型コロナ発生当初より「健常者のマスク着用には意味がない」という立場を長く崩そうとしなかった。現場の医師には「人々にマスクをつけるなというのは犯罪だ」と発言する者もいたし(フランス3 3/23)、国立医学アカデミーも4月頭にはマスク推奨を明言し、4月22日には広く国民にマスク着用を呼びかける声明を出した。それに続き4月下旬には多くの専門家らがマスク着用義務化を訴えたが、政府はそれに応えようとはしなかった(フランス・アンフォ5/17)。
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それどころか、4月頭独自にマスク着用義務を決めたソー市の条例は裁判所と国務院により覆され、5月頭、同様の取り決めをしたカンヌ市やニース市も、5月11日の全国的外出制限解除時に、「ソーシャルディスタンスが守れない場合のみマスク着用を義務とする新たな条例」が全国に出されたため、踏み出した足を引っ込めざるを得なかった(ル・モンド紙7/13)。
◆内外からの訴えに徐々に軟化
それでも、5月11日から公共交通機関内と、1メートルのソーシャルディスタンスを守れない職場などでのマスク着用が義務となったのは大きな一歩だった。しかし、マスクの重要性認識は浸透しておらず、義務でなければ着用しないという人の方が多い状態が続いた。「スーパーマーケットの中では5人に1人もマスクを着けていない」と、元厚生大臣であり、現国立医学アカデミー理事会会長であるジャン=フランソワ・マッテイは述べている(フランス・アンフォ7/13)。
そんななか、各国の専門家239人が7月6日、WHOや各国当局宛てに新型コロナウイルスが空気感染する可能性を指摘する文書を発表し、世界中で話題となった。これに追い風を受けるかのように、フランスでは11日、14名の医師がパリジアン紙上で屋内のすべての公共の場でのマスク着用義務化を求め、12日には別な医療関係者らもリベラシオン紙上でマスク着用の義務を緊急に導入するよう警鐘を鳴らした。