新型コロナに本当に効くのか 抗マラリア薬「ヒドロキシクロロキン」めぐる騒動

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◆左右に大きく揺れる評価
 ただし、ヘナオ=レストレポ教授は同時に、中断するのは「Covid-19に感染した入院患者への適用で、新型コロナウイルスの感染予防としての使用はこの限りではない」と表明している(同上)。

 それでは、ヒドロキシクロロキンに期待できるのは治癒効果ではなく、予防効果なのだろうか? その方向に見合う研究も確かに存在する。たとえば、ランセットに7月3日発表された中国の研究は、「ヒドロキシクロロキンを服用する患者においては、Covid-19の割合が少ない」と述べる。これは、湖北省のリウマチ性疾患に罹患している「6000人を対象にCovidにかかったかどうかを追跡調査」したもので、ヒドロキシクロロキンを服用している人のほうが、それ以外の薬を服用している人より、新型コロナ感染の割合が低かったという(20 minutes 7/7)。

 その一方で、まったく異なる結果を出す研究も発表されている。たとえば、7月7日発表されたフランス医薬品・保健製品安全庁(ANSM)と社会保障機関が合同で行った研究(EPI-PHARE 7/7)は、「クロロキンまたはヒドロキシクロロキンの常用者が(Covid-19)重症から逃れられるわけではない」という結論に達した。こちらはリウマチではなく、自己免疫疾患などが理由で、長期間クロロキンかヒドロキシクロロキンを処方されている5万5000人の患者を対象としたものであった(20 minutes 7/7)。

◆科学的に証明されていない薬をプロモートする2人の大統領
 冒頭に挙げた疑問だが、以上のように、クロロキン/ヒドロキシクロロキンの抗Covid-19効果についてはまだ科学的には証明されていない。

 ところで、5月半ばにはヒドロキシクロロキンを予防薬として服用していたトランプ米大統領だが、「ランセット・ゲート」の頃には記者の質問に答え「服用は終わった」と答えている(NBCニュース5/26)。しかし7月7日になって、再びヒドロキシクロロキンをプロモートする内容をツイートした。このツイートで同大統領が言及するのは、7月2日国際感染症学会に発表されたデトロイトのヘンリー・フォード・ヘルス・システムの研究だ。それによれば、同施設が「2541人の入院患者を分析した結果(中略)、ヒドロキシクロロキンを処方されなかったものの死亡率は26%であるのに対して、処方されたものの死亡率は13%だった」という(デトロイトニュース7/2)。これは上に挙げた複数の研究と真逆の結論と言えよう。

 ボルソナーロ大統領は、7月7日公開したヒドロキシクロロキンを服用するビデオのなかで、「3回目のヒドロキシクロロキン服用だ。(中略)土曜日と比べてさらに調子が良い。だから、確かにこれは効くんだよ。ほかにも薬があって(中略)、どれもまだ科学的に証明されていないのは知っている。でも私には効くんだよ」と語っている(BFMテレビのツイート)。ボルソナーロ大統領の容態は、ヒドロキシクロロキン効果を知る観点からも目が離せないものとなりそうだ。

 BBC(7/8)によれば、「現在、世界中でまだ200以上の臨床試験が進行中」であることから、クロロキン/ヒドロキシクロロキンの抗Covid-19効果も解明されると期待したい。

Text by 冠ゆき