新型コロナに本当に効くのか 抗マラリア薬「ヒドロキシクロロキン」めぐる騒動

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◆「ランセット・ゲート」
 世界中のさまざまな研究機関によって、持ち上げられたかと思えば、引き落とされるクロロキン/ヒドロキシクロロキンの抗Covid-19効果だが、なかでも世界の衆目を集めたのが、5月22日医学誌ランセットに掲載された論文をめぐる騒動だ。問題となった研究は、世界671の病院の新型コロナ患者約9万6000人のデータを対象としたもので、「クロロキンもヒドロキシクロロキンも、抗生物質(中略)と併用してもしなくても(中略)、(入院患者の)不整脈や死亡リスクを高める」と結論づけるものだった(トップ・サンテ6/18)。

 世界の医療機関は、この研究結果にただちに反応した。世界保健機関(WHO)は、3日後にヒドロキシクロロキンの臨床試験を一時的に中止した。フランスでは、公衆衛生高等評議会(HCSP)が、コロナウイルスの治療にヒドロキシクロロキンを使用しないことを推奨し、政府は(3月末の政令にある)ヒドロキシクロロキンの処方許可を廃止したほか、多くの国がヒドロキシクロロキンをコロナウイルス治療に処方するのを中止した(トップ・サンテ)。

 しかしながら、この5月22日発表の研究は、その後使用データの信憑性が疑われ、ランセット誌自体が6月2日疑義を挟む声明「懸念の表明」を出し、その2日後には論文掲載を撤回する事態に至る。

◆WHOの臨床試験再開と再中止
 ランセット誌による論文撤回を受け、独自調査を進めていたWHOは6月3日、ヒドロクロロキンの臨床試験を再開することを表明した。

 しかし、だからといって、クロロキン/ヒドロキシクロロキンの抗Covid-19効果が認められたわけではない。

 たとえば、6月3日、約800人を対象に臨床試験を行ったアメリカ・ミネソタ大学はCovid-19に晒された直後にヒドロキシクロロキンを服用しても、感染予防にはならないと発表した(20 minutes 6/4)。

 オックスフォード大学が手掛ける臨床試験「リカバリー」も6月初旬、「ヒドロキシクロロキンは、Covid-19で入院している患者に効果をもたらさない」という結果を出し、ヒドロキシクロロキンは、その後臨床試験から外された(BBC 7/8)。

 また、米国食品医薬品局(FDA)は6月15日、「Covid-19に対して出されたヒドロキシクロロキンとクロロキンの緊急認可」を「効果が見られないようだ」という理由で取り消したうえで、心臓ほかへの深刻な副作用についても言及している(STAT 6/17)。

 そうしてWHOも6月17日、再開したヒドロキシクロロキンを用いる臨床試験を再び中止すると発表した。その理由を、WHOのヘナオ=レストレポ教授は、「臨床試験“ソリダリティ/ディスカバリー”と、外部の臨床試験“リカバリー”により明らかになった事実」が、「ヒドロキシクロロキンは、(中略)死亡率の低下には結びつかないと示唆している」からだと説明している(France 24 6/18)。

Text by 冠ゆき