コロンブス、リンカーン、ガンディー像も……黒人差別の象徴破壊、世界で相次ぐ

Leila Navidi / Star Tribune via AP

◆破壊は犯罪 冷静な再評価を
 もっとも、銅像を排除するのに暴力や破壊が必要なのかという意見もある。ロンドンのサディク・カーン市長は、市内の銅像や記念碑などには2020年のロンドンの価値にはそぐわないものもあるとし、委員会を設け再評価すると発表したが、警察攻撃や器物損壊を大目に見ることはないと述べた(NPR)。

 ボストン・グローブ紙のコラムニスト、ジェフ・ジャコビー氏は、公の芸術やスペースの処分が暴徒によって行われてはならないとし、破壊行為は犯罪で、一度許せば次につながるとする。像の撤去はやむを得ないが、怒れる群衆の衝動で物事が決まるのは問題だとしている。

 撤去の基準についても、一考の余地があるとしている。レオポルド二世のようにほぼ人道に対する罪だけで記憶されている人物の場合は仕方がないが、リンカーン、チャーチル、ガンディーなどは、人種については偏見にとらわれていたとしても、世界を良いほうに変えたことは間違いない。像になった人物が、①不名誉な、不適切な行為で称えられているか、②おもに不名誉な、不適切な行為で今日知られているのか、という質問に対しどちらも「ノー」であるなら、像は残るべきではないかとしている。

 歴史上の人物への評価を議論することに何ら問題はないが、銅像の撤去は「歴史の消去」と同じではないと同氏はくぎを刺す。歴史の判決は不変ではなく、社会にはだれを称えるかを決める権利があるとし、歴史の訂正、つまり現代にそぐわない銅像撤去は、政府を通じて民主的に行うべきとしている。

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Text by 山川 真智子