警察「解体」に成功した都市も 米で高まる警察改革求める声

April Saul via AP

 ケンタッキー州ルイビルの救急隊員ブリオナ・テイラーさんや、ミネソタ州ミネアポリスのジョージ・フロイドさんなど、今年に入ってアメリカで黒人が警察の過剰武力行使により死亡する事件が相次いだことで、全米各地で大規模な抗議デモが実施され、それに伴う略奪など暴動が発生した。抗議デモ参加者は、警察が黒人市民を平等に扱い、過剰武力行使をやめることを要求しているが、それだけではなく現在の警察の体制自体が腐敗しているとして、警察解体(Dismantle the Police)や警察の予算凍結(Defund the Police)を要求している。

◆アメリカ人の大多数は警察の予算凍結に反対
 犯罪率が高い地域も多いアメリカでは、警察という機構自体に予算を拠出しないというのは現実的ではない。ABCニュースが調査会社IPSOSと実施した世論調査によると、64%のアメリカ人が警察の予算凍結に反対している。その割合は民主党支持者(43%)と共和党支持者(89%)で大きく異なり、また支持者は白人(26%)と黒人(57%)でかなり異なるが、全体的に見れば多数が反対していることは明らかだ。大統領選の候補が警察への予算拠出停止を支持した場合、選挙の結果に不利に影響することは確実だ。

 実際CNN によると、2020年米大統領選の民主党候補、ジョセフ(ジョー)・バイデン前副大統領も「警察の予算凍結には賛同しない。一定の基本的なスタンダードを満たす良識と公平さを持ち合わせる場合、条件付きで連邦政府からの補助金を拠出することを支持する」と主張している。

 ただし、黒人に対する過剰な武力行使が連日のように報道される現在、警察のあり方を見直し、改革することの必要性を感じる人は少なくないだろう。そこでいま注目されているのが、警察の予算凍結ではなく、警察の解体と再編成である。

Text by 川島 実佳