香港は再び暴力にまみれるのか 国家安全法で圧力強める習政権

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◆香港は再び暴力の連鎖にあうのか
 香港では去年6月以降、逃亡犯条例改正案に反対する大規模な抗議デモが次々に発生した。香港警察によると、これまでの逮捕者は6000人を超え、うち4割あまりが学生で、警察が市民に向けて使用した催涙弾は1万6000発以上、ゴム弾は1万発以上だったという。治安部隊が市民に向けて容赦なく暴力を振るうだけでなく、実弾を人に向けて意図的に発射するなど国際的な非難の声も高まった。

 だが、今回の国家安全法は、逃亡犯条例改正案より香港の自治を根本的に脅かす内容となっている。逃亡犯条例改正案は去年とりあえず撤回されたものの、香港市民の不満や怒りは収まったわけではなく、国家安全法がその不満と怒りにさらなる拍車をかけることが懸念される。

 そして、逃亡犯条例改正案に反対する抗議デモが激化してから、6月9日でちょうど1年となり、7月1日の香港返還記念日に合わせて200万人規模のデモを呼びかける動きもあり、注意すべき日程が続く。

◆さらなる米中対立となるか
 このようななか、米国のポンペオ長官は、香港の自治を「終焉の前兆」と表現し、北京の香港へのさらなる圧力へは断固とした措置で対応すると警告した。英国やカナダ、オーストラリアなどほかの国々も北京へ強い懸念を表明しているが、香港情勢がさらなる米中対立となるかが懸念される。だが、中国が米国に妥協することはないだろう。中国は香港を核心的利益、絶対に譲れない利益に位置づけており、米国への妥協は共産党政権の弱腰姿勢を内外に示すことになる。中国の香港への浸食は決して止まることはない。

Text by 和田大樹