香港は再び暴力にまみれるのか 国家安全法で圧力強める習政権

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 香港情勢が再び緊張している。香港島の繁華街「銅鑼湾(コーズウェイベイ)」で5月24日、共産党政権が導入を目指す国家安全法に抗議する数千人規模のデモが発生し、これまでに市民180人以上が逮捕された。香港では新型コロナウイルスの感染拡大を防止する目的で、ソーシャルディスタンス措置が取られ、9人以上が集まる集会などが禁止されているが、マスクを着用した市民らはペットボトルや傘などを治安部隊に投げつけ、一部はゴミ箱で道路を封鎖するなどした。治安部隊も催涙ガスや放水で応戦するなど、昨年の抗議デモを彷彿とさせる事態となった。

◆香港へさらなる圧力を加え始めた習近平政権
 国家安全法は、国家分裂や政府転覆、テロ行為や外国勢力の介入などを禁止することを目的としており、成立すれば、反政府デモや集会などは違法行為として、当局に発見され次第すぐに逮捕・拘束されることになる。香港の民主派や人権活動家は、この法案は一国二制度の理念に反するだけでなく、香港の民主主義や自由を根本的に脅かすものになると懸念を示している。国家安全法は、5月22日から北京で始まった全国人民代表大会(全人代)で議論されているが、28日にも可決される。中国の王毅外相は国家安全法を早く成立させると強調し、香港の林鄭月娥行政長官も同法を全面的に支持する意思を表明している。

 去年の逃亡犯条例改正案は、背後に習近平政権の圧力があったものの、直接的な相手は香港政府だった。だが、今回の国家安全法は習近平政権そのものが相手である。北京による香港市民への圧力は一段階強まったといってもいいだろう。

Text by 和田大樹