高級ブランド店、イケアに行列 封鎖緩和のスイス

ルイ・ヴィトンのチューリヒ店前に並ぶ人たち(5月12日撮影)|Satomi Iwasawa

 5月11日、フランスと足並みをそろえるように、スイスでも8週間続いたロックダウン(都市封鎖)の段階的解除が行われた。義務教育機関が再開し(クラスを半分にするなど、州によって授業形態は異なる)、レストランを含めたほとんどの商店が営業を始めた(映画館、劇場、動・植物園などは引き続き閉鎖)。チューリヒではルイ・ヴィトンやグッチなどの高級ブランド品を求める人が目立ち、新聞の1面にも取り上げられた。

◆ヴィトン欲しさに、30分待ち
 ようやく日常生活が戻ってきた! 5月11日の月曜日、スイスに住む大多数の人たちがそう感じたに違いない。幼児が幼稚園に戻り、小中学生が学校に通い、感染防止のため入店人数に制限があるものの商店が開き、運行を減らしていた多くの電車が通常ダイヤに戻り、町に活気が戻った。

 高級ブティックが軒を連ねるチューリヒの駅通りでは、ルイ・ヴィトン、グッチ、シャネルといったファッションブランド店や高級宝飾時計店に長い列ができた。日刊紙ターゲス・アンツァイガーによると、ルイ・ヴィトンの前に並んだある女性は30分待ったという。

 フリーペーパーの20ミヌーテンの街頭インタビューでは、エルメスの前に並んでいた20代の女性が「ずっとサンダルが欲しかったので来ました。オンラインで買えましたが、オンラインショッピングはどうしても必要があるときだけで、お店に行って買うのが好きなので。このあとはヴァレンティノとボッテガ・ヴェネタに行きます」と話していた。また、ルイ・ヴィトンで、母親と見られる女性と並んでいた15歳の男子は「新しい財布が欲しいんです。お店が開いたので来てみようと思いました」と答えていた。

 筆者は12日の午後に駅通りを歩いてみた。まだルイ・ヴィトンの前に長い列ができていた。またカルティエの前にも10人ほどが並んでいた。

 消費者研究を専門とする経済心理学者のクリスティアン・フィシュター氏は、この様子について「多くの人たちにとって、ロックダウンで我慢しなくてはならなかった消費欲を満たすときがやってきたということ」と説明する(同上20ミヌーテン)。

 ロックダウンの緩和によりバーゲンが行われているわけではないから、急いで高級ブランド品を買う必要はないと思えるが、失業するなど経済的な影響を受けていない人たちが、ブランド品を買って気晴らししようという心理になるのは理解できる。

Text by 岩澤 里美