“死亡率ワースト”ベルギーの出口戦略 再封鎖の準備も

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◆5月4日から段階的な封鎖解除
 ベルギーは封鎖解除を4段階に分けて行うことにしており、それぞれ、5月4日、11日、18日、6月8日を目途にしている。

 具体的な例をあげてみよう。ル・ヴィフ誌(5/4)によれば、まず5月4日には、マスクを手作りする人のために手芸店が開店した。公共交通機関を利用する12歳以上はマスクの着用が義務となった。ラ・リブル紙(5/7)によれば、5月10日からは、一世帯につき4人まで友人や親族との行き来が許されるようになり、11日からは生活必須用品以外を扱う店も営業を再開した。ただし、10平方メートルに顧客が1人、最長30分までという条件がついている。RTBF放送局(5/11)によれば、美容院や刺青サロンのような身体接触のある店や、カフェ、バー、レストランなどはまだ閉店中である。学校の授業再開は5月18日を目途としているが、ラ・リブル紙によれば、全学年一斉ではなく、多くても三学年まで、またまずは最終学年を優先したり、クラスを少人数のグループに分けるなどの条件つき再開となる。マルシェや美術館、図書館、公園、冠婚葬祭、スポーツ施設の活動再開時期については、5月18日までに検討される予定だ。レストランなど飲食店の営業再開はさらに遅く、早くても6月8日と見られている。

 しかし、これらの封鎖解除のシナリオは、あくまで前段階がうまく行けばという条件つきである。つまり、当局は、感染減少の傾向に変化があれば、いつでも前段階に戻るという姿勢を崩していない。

◆封鎖社会でも人口の3%に感染
 アントワープ大学の感染学を専門とするピエール・ファン・ダム教授は5月7日「ベルギー人の6パーセントが新型コロナウイルスの抗体を持っていると発表」した(ル・ヴィフ誌5/8)。これは、新型コロナウイルスとは関係ない理由で4月20日から26日の間に採血検査を受けた3397人の血液をテストして得た数値である。研究者らは「血液中に抗体ができるのに2週間必要なことを考えると、これらの人々の感染は、封鎖生活真っただ中の3月23日から4月12日の間に起ったものだ」と考えている(ル・ヴィフ誌5/8)。

 同研究者らは、2週前の4月23日にも、3686人を対象とした同様の研究結果を発表しており、その段階では「抗体を持つベルギー人は3%に過ぎなかった」(ル・ヴィフ誌4/23)。3%から6%への増加は、言い換えれば「厳しい封鎖政策にもかかわらず、何十万人ものベルギー人が新型コロナウイルスに感染した」ことを示しており、専門家らは「(封鎖)措置を緩めるにおいては慎重にならなければならない」と警告を発している(ル・ヴィフ誌5/8)。

 ベルギーの封鎖出口戦略を担当する専門家グループの代表、エリカ・フリーゲ教授も、同じく慎重な姿勢を崩していない。封鎖解除に入る前の5月1日の時点で、同教授はル・ソワール紙のインタビューに答え「私は(第二波は)来ると思っている」と明言している。たとえば「今年の夏か秋、ベルギーの一部の地方で起こりえる」と考える同教授は、すでに「再封鎖のシナリオ作りに着手した」と明かしている(フランス3)。

 封鎖解除の段階に入ったヨーロッパ諸国では、制限と緩和の間の手綱さばきがこれまで以上に重要となっている。完全な封鎖を行っていない日本でも、非常事態宣言解除の際には、同じような問題に直面しないとも限らない。海外の状況に学べるヒントはあるか、しっかり注目し続けたい。

Text by 冠ゆき