韓国、同性愛嫌悪が感染対策の妨げにも クラブ集団感染

Ahn Young-joon / AP Photo

◆感染はゲイバーから 非難が性的少数者に飛び火
 韓国疾病予防管理センターの副センター長は、コミュニティのなかで静かに感染が広がっており、ナイトクラブにたどり着いたところで感染が爆発したと見ている(ストレーツ・タイムズ紙)。APも、当局は梨泰院内の地域感染は最初の男性が感染する前から始まっていたかもしれないとしていることから、この男性がどのぐらい大きな役割を果たしたかは明らかではないとしている。

 ところが、韓国紙の国民日報が、最初に感染した男性が訪れたクラブはゲイバーだったと報じたことから、ソーシャルメディアには同性愛に対する中傷が大量に投稿された。男性とクラブを訪れた人々に対して、コロナとの闘いを危機に陥れるものだという非難もあったという。性的少数者に対する韓国人の考え方は近年徐々に改善されているが、反同性愛の感情は保守的な国内では根深いとAPは述べている。

 米CBSのインタビューに答えたゲイの男性は、ゲイバーが集団感染の中心地と見られるからといって、すべてのゲイコミュニティの人々がソーシャルディスタンシングのアドバイスを無視しているわけではないと訴える。感染が再拡大するなか、人々の苦しい気持ちはわかるが、多くのゲイ男性が自宅で自粛を続けていたことをわかってほしいとしている。現在のところ、同性愛者へのヘイトクライムや暴力などは報告されていないが、性的少数者のコミュニティには不安と恐れが高まっているという。

◆差別が怖い 接触者追跡の障害に
 ソウル市長によれば、市は感染に関連した5件のクラブ付近で4月26日から5月6日までに携帯電話を使った1万905人に、検査を受けて2週間の自宅隔離をするよう連絡した。同様のメッセージは、同じエリアでクレジットカードを使った494人にも送られた。情報は携帯会社、警察、カード会社から提供されている(ストレーツ・タイムズ紙)。

 5件のクラブに入店した5517人にも当局は連絡を試みたが、そのうち2000人とは連絡が取れないという。入店の際には、予防措置として来店者情報を記入することになっているが、多くがプライバシーへの懸念や差別の心配から、偽の番号を記入した可能性があるという(同上)。

 当局は、感染可能性のあるすべての人に検査を受けることを求めているが、LGBTQコミュニティへの根強い偏見を考えれば表に出てこない人も多く、それにより感染拡大のリスクが高まりそうだとCBSは述べている。

Text by 山川 真智子