「延期難しい」東京五輪、新型肺炎次第で中止も IOC委員が見解

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◆延期も厳しい、調整には時間不足
 開催を延期するという考えもあるが、パウンド氏は、このサイズとスケールの大会では無理だと述べる。また多くの国が関係し、それぞれにスポーツシーズンがあるため、単に「10月に延期」などと言うことはできないと説明している。APは、秋はアメリカをはじめどの国も人気スポーツで放送枠が埋まっているため、五輪の放送権を持つ放送局が数ヶ月の延期を受け入れることはないだろうと見ている。

 ロンドンの市長候補が代替開催に名乗りを上げ話題となったが、同氏は短期で準備が整う場所などほとんどないとし、代替地開催は現実的ではないとした。世界各地にわかれて開催という意見もあるが、それではオリンピックにならず、複数のワールドカップという結果になると主張している。また、さまざまなスポーツを19日間で世界各地に分散させることはいまからでは非常に難しいと説明している(AP)。

 開催を1年後に先延ばしするという意見もあるが、いまの状態をもう1年維持することも難しく、来年の国際スポーツ全体のスケジュールに合わせていくことも困難だとAPに話している。

◆計画性なし? ジャーナリストがIOC批判
 ワシントン・ポスト紙(WP)のコラムニスト、サリー・ジェンキンズ氏は、開催や延期を求めるのはまだ早いとしながらも、大会を感染源にすることなく健康的で安全なものにするため、どのぐらい現実的な計画がIOCにあるのかは知っておくべき時期だと述べる。200ヶ国から750万人がやって来る大会でどう感染を防ぐのかと問い、「プランB」の用意はすべきだと主張する。

 IOCはお金のために開催を推し進めたいだろうが、オリンピック関係者は口で言うほど対応への自信があるはずはないと同氏は述べる。1万8000人が集まる選手村は、ダイアモンド・プリンセス号の5倍の規模だと述べ、感染が広がる可能性を指摘する。また、大会まではたくさんの人がかかわるリハーサルがあるが、これらが適切にできるのだろうかと問う。8万人のボランティアのトレーニングも感染拡大防止のため5月まで延期されたが、47都道府県をめぐる聖火リレーは3月に始まる予定で、大丈夫なのだろうかと懸念する。ウイルスに関しては未知のことが多いが、頑固さ、否定、過度のお役所的な自信が感染拡大を招いたことはとりわけ知られているとし、IOCの仕事ぶりに納得いかないようだ。

◆五輪やらずに大赤字? 日本経済への影響深刻
 東京五輪が中止となれば、日本経済には大打撃となる。ブルームバーグは、IOCには8億9700万ドル(約996億円)の準備積立金があり、これでいくらか中止の痛みを和らげることができると述べている。

 もっともジェンキンス氏は、日本は東京五輪開催のために推定250億ドル(約2兆7750億円)をすでに費やし、30億ドル(約3330億円)をスポンサー契約で支払っていると述べる。IOCが補償をしてくれるとしても焼け石に水となることは明らかだ。パウンド氏は、コロナウイルス問題は五輪にとって戦争よりも危険な脅威と述べているが(ブルームバーグ)、日本経済にとって五輪中止は、想像を絶する危機となりそうだ。

Text by 山川 真智子