「野生動物の販売を禁止すべき」新型コロナウイルス発生で高まる声 中国
動物に由来する病気はSARSや現在流行中の新型コロナウイルス(COVID-19)だけではない。アフリカのエボラ出血熱の感染源は、野生動物を狩猟し、その肉であるブッシュミートを販売する過程にあると考えられている。1997年に発生した鳥インフルエンザは、香港の市場で売られていた鶏が原因であるようだ。また、麻疹は牛に感染したウイルスに端を発すると考えられている。
新型コロナウイルスが当初どのような経緯で人間に感染したのか、科学者による実証はまだなされていない。コウモリに由来するウイルスがほかの動物に感染し、中国東南部の都市武漢の市場で人間に広まったことが検証されている。いまやシャッター街となった「華南海鮮卸売市場」は、オオサンショウウオ、ワニの赤ちゃんやタヌキなど数十種を宣伝し、実際は飼育した動物についても野生であると称すことが多かった。
武漢の市場で採集した検体のうち、コロナウイルスの陽性反応が示された33点中31点が、野生動物を取り扱う店舗が集まる場所から採取されたものだと当局は発表している。鶏や豚など、長らく飼いならされてきた家畜に比べ、野生動物の間で広まるウイルスについては知られていないことも多いと研究者は指摘する。
武漢の市場もまた、アジア各地でよく見られる「ウェットマーケット(生鮮市場)」であった。そこでは動物たちが縛られ、またケージの中に詰め込まれた状態で陳列されている。それらが合法に飼育されている動物なのか、違法に捕獲された可能性があるのか、判別は難しいと活動家は話す。鮮度を保つために動物がその場で屠殺されることもよくある。騒々しく混沌とした環境で、動物を売買する人々に新型ウイルスが飛び移り、拡散し始めたことに大きな驚きはないと専門家は述べる。
「動物を生きたままにしておくということは、そこら中に排泄物があるということです。肉を切り分ければ血も流れます」と、非営利団体「エコヘルス・アライアンス」の代表を務めるピーター・ダスザック氏は話す。同氏は野生動物や人々の健康を新たな感染症から守る活動を行っている。
>次のページ 富裕層の人々による野生動物への欲望によって他人までもが再び危険にさらされていると、多くの人々が不満を示している