パイロット国王も 公務と「副業」をこなす欧州の王族たち

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◆王室利用はご法度、違反には厳しい目
 ただし、王室ブランドを利用した行為には王室と国民が厳しい目を向けている。前出のマッタ・ルイーセ王女は、離婚後アメリカ人のボーイフレンドと「プリンセスとシャーマン」と名付けたセミナーを主催した。利益のためにプリンセスの名を使ったということで王女は大批判を受け、今後一切仕事に王室の称号は使用しないと謝罪している(BBC)。

 ベルギーのロラン王子は、納税者によって支払われた給付金をもらう自分は、王室の役割や義務のため自由になれないと告白していた。しかし政府の許可なしに軍のユニフォームで中国の外交行事に出席し、議会から給付金を減額されている(ユーロ・ニュース)。

 ショービズサイト『チートシート』によれば、メーガン妃は女優時代に持っていた『The Tig』というライフスタイルサイトを再開するという噂があり、知名度を利用してマネタイズできるのではないかと見られている。また、ヘンリー王子夫妻は、サセックス・ロイヤル(Sussex Royal)の名前をインスタグラムやウェブサイトに使用し、商標登録もしている。主要メンバーではなくなるとはいえ、王族の名前を利用してビジネスをすることでもあれば、英王室や国民からの反発が予想される。

◆今後はコンパクト化? 納税者への配慮
 スウェーデンのカール16世グスタフ国王は、5人の孫に王族の称号を付与せず、公務も行わせないと発表した。ヘンリー王子夫妻と同様、Duke(公爵)、Duchess(公爵夫人)といった呼び名は使用可能で王室のメンバーでもあり続けるが、王族に支払われる給付金は受け取ることはできない(BBC)。

 国王の決断は、公務のために、たくさんの王族に税金を使う必要はないという意見を反映したものだということだ。また、若い王族にとっては、王室メンバーでありながら、普通の生活ができるようになるメリットもある。

 イギリスのチャールズ皇太子も、以前から「王族の合理化」を望んでいたとも報じられている。現在欧州には8つの王室が存在するが、時代の流れに合わせ、そのルールや役割も変わるときに来ているようだ。

Text by 山川 真智子