ネット配信、スクランブル化が救いの手に? イギリス公共放送に迫る危機(2)

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♦︎受信料の強制徴収を廃止へ?
 では、料金面ではどのような改善が行えるだろうか? イギリスは受信料にあたるテレビライセンス料をBBCの視聴の有無にかかわらず支払うシステムとなっており、これを不満に感じる人々が少なからず存在する。前回お伝えしたとおり、これまで免除対象であった75歳以上の高齢者も課金対象とする方針をBBCは打ち出しており、これがさらなる批判を招いていた。

 風当たりが強まるなか、BBCが取りうる一つの選択肢は、サービス加入の任意化だ。英ガーディアン紙の報道によると、ニッキー・モーガン英文化相は今年10月、Netflixのような任意加入制度の導入も検討の余地があるとの見方を示している。任意制度への移行に否定的だった従来の英文化庁の立場とは異なる見解だ。

 前掲のカンバセーション誌の記事も、現行のライセンス料制度は1946年に導入されたと述べ、見直しの必要性を指摘している。メディアを取り巻く状況が現代とはまったく違う時代に考案された、いわば時代遅れとも言える制度だ。ストリーミングサービスが一般に浸透するに伴い、任意加入に舵を切ることで視聴者の理解を得やすくする施策は、BBCにとって一つの選択肢になり得るだろう。

♦︎新制度案への懸念も多く
 ネット配信と任意課金制度はどちらも時代の流れに沿ったスマートな選択に思えるが、課題があることも確かだ。ネット配信サービスのiPlayerについては、実はBBCが主張するほど順風満帆というわけではない。フィナンシャル・タイムズ紙は、Netflixに押される形で、iPlayerを視聴する若年層の割合が減少傾向にあると指摘している。オフコムが行った調査によると、Netflixを視聴する若者の割合が66%に高まる一方で、iPlayerの同割合は26%に低下した。

 さらに、番組のオンライン配信については、コンテンツ管理の観点からも課題がある。人気コンテンツは他国への放送ライセンス供与を行っているため、国境を超えて視聴できてしまうネット配信化により、このモデルの利益が損なわれる可能性がある、と英エクスプレス紙は論じている。加えて運営資金を全面的に有料ストリーミングに頼ることになれば、過度に利益を追求する形になりかねない。あるBBCの重役は「それはもはや公共放送局とは言えない」と根源的な問題を指摘している。

 任意課金については、モーガン文化相の発言が大きく取り上げられているものの、こちらも実現性が不透明だ。ガーディアン紙は、取り組むべき政治課題としての優先順位が低いと指摘する。また、BBCに現行のライセンス料制度を少なくとも2027年まで維持させるよう、すでに英政府は宣言を行っている。

 カンバセーション誌は、任意加入制度がBBCにとってのリスクになり得るとも述べている。現行の放送内容は再放送が多く、ライセンス料を払うに値しないという認識がただでさえ広まっている。仮にそのままの内容で月額課金性の配信サービスに移行したとしても、サービス維持に必要なだけの加入者を集められるかは疑問だ。

 時代の変化への対応がBBCに求められていることは確かだが、オンデマンド配信の強化と任意加入制度への移行が決定打となるかについては見解が分かれているようだ。

Text by 青葉やまと

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