中国、米紙の記者を追放 習首席いとこの記事を執筆 ビザ更新せず

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 ウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)の記者が、事実上中国から追放された。この記者は、オーストラリア在住の習近平主席のいとこが違法行為をしている可能性があるとした記事を執筆しており、これが原因だったと見られている。国内メディアの検閲だけでなく、海外メディアの報道の自由に介入する姿勢に批判が出ている。

◆政権の報復か? 取材許可証の更新拒否
 事実上の追放となったのは、WSJのシンガポール人記者チュン・ハン・ウォン氏だ。同氏は2014年から北京を拠点として中国政治について報道してきた。WSJを発行するダウ・ジョーンズの広報担当者によれば、8月30日が有効期限だった同氏の取材許可証の更新を中国当局が却下したという。中国ではこの許可証がないとジャーナリストビザの更新ができない。

 ウォン氏はこれまで習政権や習主席に批判的な記事や、物議を醸す記事を書いてきたが、オーストラリアにおける習主席のいとこの活動について書いた記事が事実上の国外追放の引き金になったと多くのメディアが見ている。

 この記事は7月30日付でWSJに掲載されたもので、習主席のいとこで豪市民権を持つ斉明(チャイ・ミン)氏が、組織犯罪、資金洗浄、中国の地位を悪用した行為などによる疑いで、オーストラリア当局の調査対象になっているという内容だった。消息筋によれば、中国外交部の関係者はこの記事に不快感を示していたという。記事はウォン氏ともう一人のオーストラリア人記者が共同で執筆しており、豪記者のビザは更新されたものの、通常の1年より短い3ヶ月しか与えられなかった(ロイター)。

Text by 山川 真智子