観光客の愚行に鹿うんざり……ビニール袋、自撮り 海外客にも人気の奈良公園

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◆自撮り目的で鹿を刺激? 観光客の怪我相次ぐ
 ガーディアン紙によれば、奈良県を訪れた外国人観光客は2017年には209万人で、2012年のほぼ10倍となっている。多くの観光客が奈良公園で鹿との触れ合いを楽しんでいるが、人が鹿に襲われるケースも増えている。

 豪公共放送ABCによれば、2013年から2017年にかけては、深刻な怪我の報告は10件ほどしかなかった。しかし日本観光ブームが起きてからは、2018年だけで10件の重症を含む200件の負傷が報告されているという。2018年の4月以降、奈良公園で負傷した人の80%は観光客で、自撮りをするために鹿を食べ物で釣ろうとしたり、鹿の上に座ったり乗ったりしようとした際の事故だということだ。

 多くの観光客にとって、鹿との自撮りは来園目的の一つだ。しかしいい写真を撮りたいという気持ちは動物への嫌がらせとなり、結果として事故を招いてもいる。増加する観光客の行いが動物へのストレスとなっていることを、ABCは問題視している。

◆鹿は大切な観光資源、地元は対策に乗り出す
 もっとも奈良の地元の人々は、鹿と触れ合えるのが奈良の良さの一つだとし、観光客が再び訪れてくれるように、トラブルをなくすためできるだけの努力をしたいとABCに語っている。

 ビニール袋の件では、ボランティアたちが公園内の清掃を行い31キロのビニールゴミを集めたということだ。また奈良県では鹿の死因について調査を行い、認可されていない食べ物を動物に与えることがいかに危険か、張り紙などで周知する方針だという。

 鹿との接し方についても、鹿せんべいはじらさず速やかに食べさせる、終わったら鹿に手の平を広げて見せ、もうないことをわからせるなど、鹿に接する際の注意点が公園内に掲示されている。さらに、すでに奈良公園を訪れた外国人観光客たちも、かわいい鹿のイメージしかない人々に対し、鹿たちはアグレッシブになり得ると旅行サイトで警告を発しているということだ(ABC)。

 日本は2020年までに訪日外国人観光客4000万人を目指しており、今後も奈良公園の人気は高まりそうだ。観光客と鹿が共存できるよう、適切なルール作りに取り組んでもらいたい。

Text by 山川 真智子