捕鯨より将来性あり? 日本近海でのホエールウォッチングが人気

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◆政府の矛盾? 捕鯨とエコツーリズムの両立
 商業捕鯨再開は、ホエールウォッチングを新たな産業にしたいとする羅臼にとっては気になるニュースだ。捕鯨船は、ホエールウォッチングが行われる国立公園地域には来ないが、すぐ近くのオホーツク海での捕鯨が盛んになるのは心配だと地元民はロイターに話している。子供や外国からのホエールウォッチャーに配慮し、羅臼のホテルやレストランでは鯨肉は出していない。日本政府は観光業拡大に積極的なのに、将来性のあるエコツーリズムの邪魔になる捕鯨再開はいかがなものかという意見も出ている。

 もっとも、IFAWのパトリック・ラメージ氏は、商業捕鯨再開で、日本の鯨肉市場が消滅することを期待している。すでに日本で鯨肉を食べる人はほとんどいないため、いずれ日本政府の捕鯨に対する補助金がなくなれば、市場の原理で捕鯨産業はなくなるという見方だ(ナショナルジオグラフィック)。これに対し、前IWC日本政府代表の森下丈二氏は、鯨肉文化の残る一部地域に限って流通させれば、ニッチな市場としてビジネスチャンスはあるとしている(ロイター)。

 日本政府は2020年までには4000万人、2030年までには6000万人の外国人観光客を呼び込むことを狙っている。エコツーリズムの強化は政府の目標の一つだが、商業捕鯨とホエールウォッチングの両立が海外からどう受け止められるかは気になるところだ。

Text by 山川 真智子