英ロイヤルベビー、米に納税義務か 二重国籍で史上初の事態に

Facundo Arrizabalaga / AP Photo

◆生まれたときから資産家 ロイヤルベビーは即納税?
 アメリカは、非居住者にも課税する世界でも数少ない国の一つだ。よってメーガン妃自身も、今年の納税申告をアメリカで行う必要があった。米NBCによれば、軍関係者を除き、推定870万人のアメリカ人が世界160ヶ国以上に暮らしているという。これらの人々にはアメリカでの納税申告が義務付けられているが、一般的な額の給与所得などしかなければ、ほとんどの場合は追加で課税されることはないということだ。

 ただし裕福層の場合は話が違う。イギリスの元外務大臣でEU離脱の主導者の一人であるボリス・ジョンソン氏は、イギリス人の両親のもとニューヨークで生まれたため英米二重国籍となった。2014年にロンドンの住宅を売却したが、その利益をIRSに指摘され、結局米側に税を納めている。怒ったジョンソン氏は米国籍を離脱した。ちなみに米国籍を放棄するには2350ドル(約26万円)の費用がかかり、ただでは逃げられない制度となっている。

 莫大な資産を持つ英王室の一員である場合はさらに深刻だ。ニューヨーク大学ロースクールのスティーブ・ディーン氏によれば、ロイヤルベビーは理論的には来年からすぐ納税申告をする必要はないが、名義が本人のものとなっている投資などの場合は申告の対象となる可能性があるということだ(NBC)。

 国際税制に詳しい弁護士のスチュアート・E・ホーウィッチ氏は、ロイヤルベビーは利害関係のあるすべての金融機関口座をリスト化する必要があると述べる。その結果として、王室の銀行口座の詳細が、IRSに知られてしまう可能性もあるという。納税申告用のアドバイスを行う企業、アメリカン・タックス・リターンズの創業者、デービッド・トレイテル氏は、生まれてくる赤ちゃんは、信託財産やウィンザーの豪華な家の使用、またその他の王室が持つ資産へのアクセスを持つことになるため、たくさんの報告を行う必要があるだろうとし、王室の会計士泣かせになるのではと話している(米CBS)。

◆財布の中身があらわに? 歴史上初の事態に英王室も警戒
 もっともホーウィッチ氏は、王室にはファイナンシャル・アドバイザーがおり、彼らがロイヤルベビーをアメリカの納税義務から保護し、財政上のプライバシーを最大限に保証するために必要な法的ステップを取るだろうと述べている。そう簡単には大切な情報がIRSに開示されないという考えだ。

 そもそもアメリカ人が英王室の一員になったことはこれまでになく、米国籍を持つロイヤルベビーの納税問題は王室にとっても初めてのことだ。米CBSは、当然親であるハリー王子とメーガン妃も米側ともつれる可能性にも備えておくべきだとしており、いまだかつてない事態の行方に注目している。

Text by 山川 真智子