海外こんまりブーム、思わぬ余波 「ときめかない」寄付がリサイクルショップに殺到

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◆何でもあり? 予期せぬ品物にスタッフ仰天
 片づけの際に出た「ときめかない」ものの寄付が福祉につながるのなら素晴らしいことだが、チャリティーショップの店員にとっては、必ずしもときめく事態ではないとWSJは述べる。持ち込まれる品物のなかには、大量の汚れて擦り切れた古着、悪趣味な小物、販売不可能な家電製品などが含まれている。ヴィニーズのマネージャーは、残念ながら明らかに役に立たないものを持ってくる人々もいるとし、自分たちの店はゴミ箱ではないと不満気だ。

 寄付されるもののなかには、あっと驚く珍品も含まれている。ヒューストンのグッドウィルのストックルームでは、大型ゴミ箱にいっぱいの剣、短刀、ライフルが見つかった。処理に困ったスタッフは、結局警察に連絡し、引き取ってもらったということだ。ほかにも子供に説明できないようなポルノ関連の品、マネキンなどが持ち込まれていたという。オーストラリアのチャリティーショップでは、サメの骨、入れ歯、義肢まで見つかっている。店員は、「友達にあげられないようなものは持ち込まないで」とアドバイスしている(WSJ)。

 WSJによれば、ヒューストン近隣、リバー・オークスにあるグッドウィルの店舗に、ガールフレンドのものだという1000ドルを超える値札が付いたままの、グッチとプラダの靴を持ち込んだ男性がいたそうだ。当地は古くはオイルマネー、今ではハイテクマネーで潤っている地区で、このような裕福な人が多い地域では高級品もあるということだ。

◆捨てていいもの、お金になるもの……寄付する前に一考を
 テネシー州で初めてこんまりコンサルタントの資格を取ったモニカ・ミラー氏のもとには、Netflix番組開始以来、コンサルティングの依頼が増えているという。片づけはだいたい衣類の整理から始まるが、同氏のクライアントの多くが、捨てることに対する罪悪感から、ゴミ箱行きレベルのものでも寄付することを望むという。

 チャリティーショップに持ち込むより、良い方法もある。メディア番組の司会者で20世紀アンティークの専門家のレイン・ハーシュ氏は、手放す前に、その品物の市場価値を見極めよと述べる。eBayなどで商品名やキーワードを入れればおおよその価値がわかるし、地元のオークションハウスやアンティークショップでも鑑定してくれる。ビンテージ品、デザイナーグッズ、さらには古いビデオゲーム、初期のアップルコンピュータまで、高く売れるものはたくさんあると述べている。金融専門家のリネット・カルファリ-コックス氏は、アンティークでなくても最近のモデルの電化製品やあまり着ていない衣類などは、メルカリなどのアプリを利用して売ってしまえばよいとアドバイスしている(Fox Business)。

 ミラー氏は、クライアントのほとんどは、片づけ後は身軽になりほっとした気分になるとWSJに話す。確かにときめかないものを一掃するのは精神衛生には良さそうだが、自分のいらないものが他人の迷惑となってしまうのは考え物だ。片づける側のモラルや意識の整理も、今後は必要と言えそうだ。

Text by 山川 真智子