除夜の鐘に合わせてブドウ12粒 幸福願うスペインの年越し行事

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◆難易度高 近年はパーティの余興にも
 一見簡単そうに見えるこの伝統だが、鐘の音に合わせ12粒のブドウを次々と口に押し込むというのはかなり苦しいことだという。お祭り気分もあって周りは盛り上がり笑いがあふれる。おそらく最大のチャレンジは、ヒーヒー笑いながら口いっぱいのブドウを飲み込もうとするため、吐き出したり詰まらせたりしないことだと、旅と食のサイト『Food Republic』は解説している。また、男性にとっては時間内にタスクをやりきるという、テーブルを囲んだマッチョを競う戦いでもあるようだ。

 マドリッドのプエルタ・デル・ソルでは、大みそかにたくさんの人々が集まり、歌って踊って、シャンパンを飲み、12粒のブドウを口に含むという。また、人気の行事だけに、スペインでは、各地でブドウを食べている人々の様子がテレビでライブ中継されるということだ(旅行情報サイト『itinari』)。

 近年タパス・バーやスペイン料理店などの人気も高まっており、ヒスパニック系以外の人々も新年のお祝いに12粒のブドウを食べるようになったという。Food Republicは、新年のパーティに取り入れることを提案する。種無しブドウを買ってゲスト一人につき12粒ずつ分けておくこと、除夜の鐘が聞こえない地域の人は、鐘の音が鳴るアプリをダウンロードすることを勧めている。

 パーティでは、ブドウの食べ方も、きっちり鐘に合わせて12粒食べ切る、一気に口に含んでしまう、鐘が鳴る前にフライングする、食べやすいように半分サイズにしてフォークで食べる、ブドウを投げて口でキャッチするなどさまざまだという。もっとも酔っ払っているため途中で断念してしまうパターンがほとんどということだ(Food Republic)。

◆目標は気負わずに ブドウに込める新年の誓い
 さて、カナダに住むヒスパニック系のライター、アリッサ・ゴンザレス氏は、ライフスタイルサイト『Greatist』で、自分の12粒のブドウの経験を紹介している。彼女の家庭の場合は、一粒のブドウにつき一つの「新年の誓い」を立て、「壁の修理をする」「旅行をもっとする」「編み物を習う」など、ごくごく小さい自分のゴールや希望をブドウに込めていたという。

 新年に向け人は壮大な誓いを立てがちだが、結局すぐあきらめたり忘れたりしがちだと述べるゴンザレス氏は、大きな目標よりも、むしろ達成しやすい小さな目標をいくつも持った方が良いのではないかと提案する。新年にあたり、ブドウを食べながら、12のやりたいことを気軽に考えてみるのも、なかなか楽しそうだ。

Text by 山川 真智子