子供の自傷行為が深刻になるイギリス 14歳女子の22%が過去1年に経験

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◆デジタルないじめも引き金?
 英国児童虐待防止協会(NSPCC)は、子どもたちが自傷行為をするのは、自信がない、孤独感を味わっている、悲しい、怒っている、無気力、コントロールできない感覚といったメンタル状態が関係していると言う。そんな気持ちになって自傷行為をする子は、いじめられていたり、学校の成績が良くなければと強いプレッシャーを感じていたり、家族や友達との関係がよくなかったりすることが多いという。

 自傷行為につながっているかはわからないが、子どもたちの間でデジタル機器の利用が増えたため、文字によるいじめによって心が傷つけられることはあり得るだろう。英国情報通信庁(Office of Communications)の報告書「Children and Parents: Media Use and Attitudes Report」(2017年11月出版)には、3~15歳のメディア使用の状況が細かく書かれている。8~11歳と、12~15歳の2つのグループを見ると、8~11歳はスマートフォン所持率39%、タブレット所持率52%、ソーシャルメディアのアカウント所持率23%、一方、12~15歳はスマートフォン所持率83%、タブレット所持率55%、ソーシャルメディアのアカウント所持率74%だった。

 2つのグループで、いじめにあったことがある率を見ると、12~15歳は8~11歳よりもいじめにあった割合が高く、どんないじめかで見てみると、「面と向かって」「ソーシャルメディア上で」が各12%、「メッセージで」5%、「オンラインゲームで」「写真やビデオで」「電話で」が各4%、「ほかのウェブサイトやアプリで」が1%という結果だった。

◆モデルのようになることや、学校の試験もストレス
 ガーディアン紙の別の記事では、18歳のジェシカさんが自分の自傷行為の経験や、周囲の女子の自傷行為について語っている。ジェシカさんは、なぜ女子が自傷行為に走りがちになるかはわからないとしつつ、男子は男性らしく、女子は可愛らしくあるべきという典型的な見方が関係しているかもしれない、それがプレッシャーになって、自分は自分らしくいられないという気持ちになってしまうのだと言う。女性のモデルのようになろうとする女子は多いという。

 この記事には、様々な学校で子どもたちとかかわって、若者のメンタルヘルスのエキスパートとされるナターシャ・デボンさんもコメントを寄せ、「女性が怒ることはよくないと女子は教えられ、男性が悩みを語ることはダメだと男子は教えられる。こういった社会化は重要なポイントだ」と述べ、体育、芸術、音楽の授業が軽視されて、試験ばかりが重視されていることもよくないと批判する。

 政府は、来年から多額を費やして各学校でのメンタルヘルス対策(子どもたちが学校でカウンセリングを受けられるようにするなど)を実施するが、2022~23年までにカバーできるのは全国の5分の1にしかならないという(ガーディアン紙)。

Text by 岩澤 里美